発覚した母の淫らな行い-3
「日本史は苦手なんだよなぁ。えーと【豊臣秀吉が側室の淀の方に建てた建物の名称は?】。わかるけど、どんな漢字だっけ?」
今時の子だった。参考書や教科書を繰るよりスマートフォンで調べる方が馴れていた。
「しまった。スマホ2階だ」
真希は自分のスマートフォンを、自分の部屋に置いたのを思い出した。
わざわざ2階に取りに行くのも億劫だ。ふと目を移すと、真奈美のバッグが目についた。中を覗くと案の定それが入っていた。
「あるある。ちょっと借りるよ」
つぶやきながら、バッグの中から真奈美のスマートフォンを取り出すと、手慣れた様子で起動スイッチを押した。液晶画面が明るく灯り、縦3×横3の9つのドット画面が現れた。
「どうしてこんな設定したんだろ」
しばらく前までこんな設定をしていなかった。世間知らずで機械音痴の母親が、暗証設定していることに違和感を覚えていた。
(あたしに聞かずによく設定できたなあ)
その画面が出ても真希は慌てなかった。前日のこと、何の気なしにロックを解除する真奈美の操作を目にしていて、その動きを覚えていたからだ。
右上のドットに指を触れて、左にずらし、そのまま左巻きの渦を描くように指をずらしていった。
「ふふふ、コナンくん。右利きには不向きな逆渦巻きに設定したようだが、こんな単純なトリックを解くのは朝飯前だよ」
ドット画面がホーム画面に変わり真希はニヤリと微笑んだ。
「ほらね」
文字検索のアイコンに触れて、キー操作の画面が出すと、真希は調べる単語の初めの文字を入力した。
「豊臣秀吉が側室の茶々に建てた建物は【聚楽第】。そしてそのじゅらくだいのじゅは、潤くんのじゅ」
戯れに節を付けて口にしたが、【じゅ】の文字を入力して画面に出てきた予測文字を見て、真希の指の動きが止まった。
【潤くんに】
それが予測文字の一番初めに浮かんでいる文字だった。
「【潤くんに】って何?どうして潤くんの名前が出てくるの?」
訝しげにその単語に触れると、次の予測文字が出てきた。真希はその文字を見て驚いた。
「な、何よこれ」
もう止まらなかった。真希は立て続けに予測文字に触れて、真奈美が直前に作成した文章を再現させた。
【潤くんにおまんこされて、気持ちよかった昨日の画像です。素晴らしいコレクションが増えました。これを見ながら今から学校のトイレでオナニーをします。真奈美】
真奈美が潤という名の者に送ったメール文章なのは明らかだった。問題は【潤】がクラスメートの潤なのかということと、その卑猥な内容だった。
動悸が激しくなり、今にも倒れそうになりながらも、真希はメールのアイコンに触れて、送信履歴を確認した。そこには真希が再現した文章と、同じ内容が書かれていた。この潤がクラスメートの潤ならば、恥ずかしいどころの騒ぎではなかった。
「お、同じ名前の他人だよ」
真希は自分に言い聞かせながら、祈るような気持ちで、震える指先を添付画像のリンクに触れた。画面がまた9つのドット画面に切り替わったので、さっきと同じ動作を繰り返して暗唱設定をクリアした。切り替わった画像を見た真希は、へなへなとその場に崩れた。
画面には、恋する相手に後ろから嵌められながら、気持ちよさそうに喘ぐ母親の姿が映っていた。