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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第4話『素人ドッキリマル秘報復』-8

 作業を終えた女史Cは、よろめきながら部長のデスクにゆく。 手には『早退願』をもっていた。 既にメンタルはボロボロで、一刻も早く家に帰って眠りたい、もう何も考えたくない――そんな気持ちが『早退願』の震える文字から見て取れる。 部長は黙って判をおし、女史Cは一礼、自分の机に戻って荷物を纏めはじめた。 

 ジリリーン。 ガチャ。 

 ここで営業部に電話が入る。 受話器をとったのは新人の男子社員――今回のセクハラ被害者だ。 何事か話したのち、血相を変える。 『今日、抜き打ちでウチに保健監査が入ったんですが、ウチの生ゴミから不審物が見つかったそうです。 あの、誰かが、その……生のウンコを燃えるゴミにいれたせいです。 ちぎったボール紙に付着したウンコが6欠片ほど、生理用品に混じって入っていて。 衛生上見過ごせないということで、これからすぐ事情を聞きにくるそうです。 混入理由が判明しなかった場合、行政措置になります』 部長に報告する男性社員。 事態に慌てた営業課全員が2人のもとに駆け寄る。 ここでいう行政措置とは『営業停止』だ。 営業部にとって致命傷以外の何物でもない。 部長が『誰か心当たりはあるか?』と問うも、誰もが顔を見合わせるばかり。 女史Cは、自分のデスクで片付ける手を止め――というか、完全に固まっていた。 『生理用品』と一緒に捨てられていたこと、ちぎったボール紙に付着していたこと……女史Cが今朝紙がないトイレで拭いたウンチに間違いない。 やがて営業部員の視線が女史Cに集まり始める。 今朝、トイレで女史Cが大量のウンチをしたこと、そのことで何かしら社長から叱られたことは、営業部員全員の知る所だ。 まずい、まずい、このままでは自分が犯人だとバレてしまう――青を通り越して真っ白な顔。 定まらない視線。 

 そんな中、おずおずと男性社員が手を挙げた。 『あ……今思い出しました。 それ、多分俺っす』『俺、あの、トイレで紙がなくて、トイレットペーパの芯で拭いて……そのままだと流れないと思って、女子トイレのゴミ箱に捨てちゃいました』『非常識で、マジですいません。 こんなことになるなんて思ってなくて……』『は、はい、始末書書きます。 とんでもないことしでかしたんで、ちゃんと自分のケツは自分で拭きます。 もちろん、ちゃんと監査に説明します』『申し訳ありませんでしたっ』 営業部員たちに罵られながら、男性社員は土下座した。 部長が男性に『もういいから』と顔をあげさせ、監査対策に善後策を協議すべく社長室へゆく。 他の営業部員は自分の仕事に戻り、男性社員も自分のデスクに戻ってきた。 女史Cの直属の部下でもあるため、席は隣同士になる。

 ふうーっ、大きなため息を男性がつく。 女史Cは、まだ固まったまま動けない。 『男らしくなくてすいません。 普段迷惑かけてる分、こういう時しかお返しできないんで』  男性は女史Cにだけ聞こえる小声でつぶやいた。 女史Cは、俄かには信じられない。 もしかしたら自分以外にも紙がなくてウンチをゴミ箱に捨てた人がいたのかも、と一抹の期待を持つ。 けれど男性の目は真相を理解している眼つきで、悪戯っぽく笑っていて……女史Cは、ようやく自分を庇ってくれたことを確信した。 頭の中がグルグル回る。 いつも叱ってばかり、男のくせに仕事が遅い、男のくせに気が利かない、エトセトラ、エトセトラ。 ストレス解消とばかり、存分に罵声を浴びせてきた。 その青年が、絶体絶命の自分を助けてくれる……失態続きですさんだ心が搔き回される。 女史Cの顔は、いつの間にか涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。 泣きながら、気を浸けの姿勢で。 女史Cは肩でしゃくりあげながら、途切れ途切れに、いままでの自分の態度、言動、非礼を詫びた。 決してすっぴんを他人に見せなかった女史Cが、涙と鼻水で化粧が落ちることに構わず謝る……そんな姿勢は、真摯な気持ちに裏付けがあろう。 男性社員は腕を背中に回し、女史Cに気づかれないよう看板を握る。 『ドッキリ大成功!』――悪趣味なペンキ文字は健在だった。

 

 ……。

 『ドッキリ』は1本の尺が長いため、そうそう本数があるわけではない。 それでも『父親と一緒に下着を洗濯することを嫌がった娘に、洗ったと偽って『洗っていない下着』を穿かせ続ける。 新しい下着を購入しても、中身は『使用済み』とすり替えられている』ようなドッキリや、『恋人が泣いたことでバカにした女性を、強制的に花粉症にして、四六時中泣かせ続ける』ようなドッキリなど、様々なバリエーションが揃っている。 

 セクハラは決して女性の専売特許ではない。 男性にしても『女性だから』や『女性のくせに』といった言葉遣いには、含むところがあるだろう。 不必要に『性差』を強調することも、逆に無視することも、どれも立派なセクハラだ。 『2ch』では『女性が男性に対して行ったセクハラ』ばかりがクローズアップされるわけだが、男性もセクハラに気を付けるべきということは、誰もが常識として備えている。

 市民を待ち受ける不条理地獄、まだまだ始まったばかりである。


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