第4話『素人ドッキリマル秘報復』-4
被害者 男性(16)。
依頼A:『学校のヤンキー女子B(16)に、キモイ、ウザいと馬鹿にされ、クラスで孤立した』
ドッキリ内容:『ヤンキー女子Bを学校人気投票最下位にし、仲間はずれにする』
朝HR。 校内放送で『今朝のHRに全生徒対象で、もっともハンサムな『ミスターA校』、一番素敵な『ミスA校』を投票します。 全校生の写真を体育館に掲示しているので、誰に投票するか決めてください』と通知がある。 賑やかになるクラス。 休み時間になると、校内随所に仕掛けたカメラにも、また被害者男性と女子Bのクラスでも、体育館に向かうべく生徒達が席をたつ。 女子Bもその1人で、取り巻きと一緒に楽しそうに体育館を闊歩していた。 なお、女子B以外は、教師を含め全員が仕掛け人になっている。 昼休み、全校生徒に投票用紙が配られた。 そこには『ミスターA校』『ミスA校』に並び『一番嫌いな人』の項目がある。 女子Bは最後の項目に驚いて周りを見渡したが、他の生徒たちはああだこうだいいながら、楽しそうに記入しており、女子Bも深く考えてはいなかったのだろう、全部の項目に記入する。 ちなみに女子Bが記入した名前は、今回の被害者男子で、理由は『キモくてウザいから』と書いていた。 投票用紙を管理委員が回収し、昼休みが終わった。
昼休み。 校内放送で投票結果が発表される。 ミスター、ミスA校の発表では上位3名が読み上げられ、1人ごとに歓声があがった。 『最後に、校内で最も嫌われてる人の発表です。 理由は『ぶさいく』『態度が大きい』『嘘つき』『裏表がひどい』『陰口ばかりいっている』『乱暴』『センスが悪い』など、容姿から性格まで全方向に渡るようで、断トツ、校内ほぼ全員の得票で決定しました。 『ワースト1』は女子Bさんに決定しました。 女子Bさん、おめでとうございます。 これで校内放送を終わります。 御静聴ありがとうございました』 ガタッ、女子Bの椅子が倒れる。 放送に驚いて、それまで貧乏ゆすりしていた女子Bがバランスを崩したからだ。 いつもなら誰かが起きあがれるよう手を貸すのだが、今日は誰も知らんぷり。 女子Bが友達に放送の内容を確認しようとするも、誰も何も答えない。 こうして全校生徒による女子Bへのイジメが始まった。
事情が呑み込めないまま、逃げるように教室を出る女子B。 廊下ですれ違う全員が、すれ違いざまに『放送聞いた? やっぱりって感じ』『ウザいのも大概にしとけっつーの』など、女子Bを見ずに言い放つ。 女子Bはやがて走りだし、トイレの個室に駆け込んだ。 排泄する素振りもなく、洋式便座に座るでもなく、扉に背中をピッタリつけて肩で荒い息遣いだ。 昼休み終了のチャイムが鳴るまで、女子Bは息を殺してトイレの中に隠れていた。
教室に戻ると、女子Bのカバンがない。 カバンはゴミ箱に捨てられていた。 机の中身もすべて、ゴミ箱の周りにぶちまけられている。 代わりに一輪挿しが机の上に置いてあり、タンポポの花が活けてあった。 流石に我慢できなくなったんだろう、何故こんなことをするのか、怒りに震えながら女子Bがクラスに問いただす。 けれど誰も何も答えず、冷笑しながら『猿がなんかいってら』『カバンだかなんだか知らないけど、クサいゴミを捨てて何が悪いの』などと、相手にしなかった。 たまらず女子Bが近くにいた女子Cの胸倉をつかむ。 途端にクラス全員が立ち上がった。 近くにいた男子が女子Bを羽交い絞めにし、女子Cとの間に割って入る。 ある生徒は女子Cを慰め、ある生徒は女子Bをビンタし、またある生徒は女子Bに唾を吐いた。 女子Bが大人しくなるまで、一方的なリンチになる。 やがて女子Bが大人しくなると、羽交い絞めにしていた男子が女子Bを『ゴミはゴミ箱に』といいながら突き飛ばす。 女子Bがゴミ箱にあたると、ゴミに混じって女子Bのカバンの中身が散乱した。 クラス中から『教室を汚すな』『もっとビンタされたいの』『ゴミは全部拾え』『ゴミ箱をあんたの汚物で汚すんじゃない』と罵声を浴びせられる。 女子Bは膝で床を捩(よじ)り、しゃくりあげながらカバンの中身を集め、教室から出て行った。 廊下で担任に呼び止められるも、何も答えず、フラつきながら下校した。 家では、家族に心配かけまいとでもいうのだろうか、何事もなかったように明るく振舞う。 けれど自室に戻ってからは、布団をかぶったきり一度も顔を出さなかった。