初めてのクリスマス-2
「さてと、わしはここで失礼するよ、荷物はタクシーでもつかまえて運んでくれ」
「そうは行きませんよ、大沢さんも家まで来てもらわないと」
「なんだ? この上荷物持ちまでさせるのか?」
「それもですけど、夕飯食べて行ってくださいな」
「夕飯? これから帰って用意するのかね?」
「ケータリング頼んであるんですよ」
「なんだ? ケータリングってのは」
「まあ平たく言えば出前です、ピザとチキンですけどね、三人前頼んでありますから、あ、若者向けで大沢さんの口には合わないか……」
「見損なうなよ、これでもアキバのメイドカフェじゃモテモテだったんだからな、ピザにチキンとはクリスマスらしくていいじゃないか」
「そう来なくちゃ」
「そうと決まれば……タクシーはまだだいぶ待ちそうだな」
「そうですね、何せクリスマスですからね」
「それじゃ、わしはちょっと買い物をしてくるとするか」
「これ以上何を?」
「ケーキだよ、クリスマスにケーキなしじゃ格好がつくまい?」
「大沢さんがケーキ……全然ピンと来ない」
「何とでも言っておれ、里子にじゃないぞ、桔梗に買ってやるんだよ」
新しい住まいとなった2LDKのマンション、その広いLDKでピザとチキンを三人で囲む……明かりを落としてケーキの蝋燭に火が灯ると、桔梗は思わず涙ぐんでしまう。
「また泣くぅ……桔梗、当たり前のことにいちいち泣かないの」
「はい……うん……でも……」
里子は桔梗の肩をしっかりと抱き寄せた。
「わかるわ、クリスマスを祝ったこともなかったのね……」
「……うん……すごく羨ましかった……」
「泣かなくて良いの……もうこれからはこれが当たり前なのよ……お誕生日もお祝いしましょうね、あたしの誕生日もお祝いしてね……」
「うん……」
「里子の誕生日? まだ歳を取るのが嬉しいか?」
「ああ〜、大沢さんったら、人がせっかく感傷に浸ってるのに」
「ははは、すまんすまん……桔梗、正月にはわしの家にも遊びに来てくれよ」
「はい、必ず……」
「待っとるからな……わしはまだお年玉ってのをやったことがないんだよ、楽しみにしとるからな」
「お正月って言えば和服ね、ねえ、大沢さん」
「ああ、わかったわかった、カードの限度額まではまだだいぶあるからな……」