桔梗のショー-9
着替えを終えた里子は、ソファに座っている大沢の隣に腰を降ろす。
「大沢さん……門村さんも一緒に聞いてください、幸恵ちゃんもね」
「なんだい?」
「あの娘……引き取りたいんです」
「桔梗を?」
「ええ、門村さん、桔梗の父親の負債は500万だったとか」
「ああ」
「五百万……あの娘の、この世に肩を並べられる娘がいるかどうかもわからないあの娘の価値がたったそれだけ……」
幸恵がぽつりと言う。
「まあ、そういうことになるな」
「私が払います、それであの娘を私の娘にする」
「本気か?」
「あの娘は私が追い求めてきた本物のM……失神するほど責められたのに叫び声ひとつ上げない……」
「確かに……」
「学校にもまともに行けないのは哀れです、きちんと高校まで行かせて、改めて私のMとして調教する……あの娘なら制約だらけの店のショーでもお客を唸らせることが出来る、ゾクっとさせることが出来る……」
「ああ……そういうことなら組にも異存はないよ、金儲けを目の前にして俺がこう言うのもなんだが、本当は利子が膨れ上がってるんだが、それは棒引きにしよう、若い者は寂しがるだろうが……ただしママが値切ったことにしてくれよ、俺が怒られちまうからな……」
「ありがとうございます」
「桔梗を養女にする、か……里子も思い切ったことをするな」
「変ですか?」
「いや、いい考えだ、大賛成だよ……おお、桔梗も来たか、まあ、座れよ」
「桔梗、ママと話はついた、ママの娘になることに異存はないよな」
「夢のようなお話で……異存なんか」
「じゃあ、決まりだ、良かったな」
「良かったわね、桔梗ちゃん」
「……はい……」
「泣かなくてもいい、わしも一枚噛みたいところだが」
大沢が桔梗の涙を見て努めて陽気に言う。
「わしはおじいちゃんということで良いかな? またメシをご馳走させてくれ、それから誕生日やクリスマスにはプレゼントもな……」