7月1日-2
私は心の中で、いつものお願いをすると、悟られぬよう精一杯の笑顔を作る。
「ねぇ。お話して?今日はどんなことをしたの?」
小さな頃からずっとずっと願ってた事。
私が死んだあと、彼の世界が悲しみで染まりませんように。
彼がいつも笑っていられますように。
彼が幸せでありますように。
ひんやりした部屋に、ぽつんと佇む。
懐かしい筈の部屋には色がなく、凍てついた大地の様だった。
そんな中で彼は身を守るように眠っていた。
少し大人びた顔を悲しみにそめながら。
私は届かないと知りながらも、彼の名前を呼ぶ。
『しゅうちゃん…』
私の声は微かに大気を震わせただけで、やはり彼には届かない。
無駄だと知りながらもう一度だけ愛しい名前を呼んでみる。
『修ちゃん…』
やはり無理だったのだ、と諦めようとした瞬間。
彼は重いまぶたを開き、ゆっくりと部屋を見渡して、視線を止めた。
見える筈のない。
私の方を。
そして彼はゆっくりと口を開いた。
『おはよう。ちはる』
END