抗い-2
「ねぇ、上に乗ってもいい?」
赤らんだ顔の美紀子が武史を見て、冷めたような口ぶりで言った。
「ああっ。……だけど、手はそのままだぜ」
「ふふっ、大丈夫よ、手が使えなくても慣れてるから……」
(よほど飢えてるんだな。……自分から欲しがって、しかも跨がってくるなんて……)
美紀子は絡めていた両脚を弛め、武史から離れた。
最後まで体内の残っていた屹立がようやく蜜壺から抜け出た。
屹立は全体が白い泡に包まれていた。
武史はゴロンと畳の上に仰向けになった。
二度の射精で、幾分か張りは無いものの、若い武史の男性は天を向いてそそり立っている。
「立派ねぇ、ピクピク動いてるじゃない」
おもむろに起き上がった美紀子は、武史の両腿の間に立った。そして、ユックリと武史の右の太腿の上に腰を降ろして跨がった。
武史は太腿の上に濡れて冷たくなった美紀子の陰毛が触れるのがわかった。そして、脚が重くなり、美紀子の股間を太腿が感じた。
太腿の上に乗っている美紀子の秘裂の生暖かくヌルヌルした感触が武史にも伝わってきた。
すると、美紀子が股間を太腿に擦りつけて、ユックリと前後に動かし始めた。
湿った音が二人の間から聞こえてくる。
その音で、武史の逸物は勢いを増してきた。
(そうか、美紀子はこうやってオナってるんだ)
少しずつ美紀子の動きが速くなってくる。しだいに喘ぐ顔に変わってきている。
それを見ていた武史は、もうピンピンとなってきていた。
「あらあら、もうこんなに……」
喘いでいた美紀子は、顔を戻し、武史の股間を見おろした。
そして、両手が括られているが、そのシャツにくるまった手で、プルンと屹立を跳ね上げた。
「ふふふ、……元気ねぇ……」
武史の屹立は、弾かれても、馬が嘶くようにまた元の位置に戻った。しかも一段と硬さを増していた。
太腿の上の美紀子は少しずつ上に這い上がってきていた。
そして、美紀子の右膝が屹立の根元に達したときだった。
美紀子が右膝を少し動かし、ちょうど玉袋の上に乗ったその瞬間だった。
「えいっ!」
美紀子が叫んだ。
美紀子が玉袋を右膝で畳みに金玉を挟むように押し潰した。
「うぐっ!」
武史の顔が突然の襲撃で苦渋に満ちていた。
そして、太腿の上の美紀子をはね飛ばすと畳の上で身体を丸めて悶絶していた。
「うげっ!」
美紀子はさらに、その股間を狙って右足先で玉袋を蹴った。
二度、三度と蹴ったと同時に、括られた両手を思い切り武史の額にたたきつけた。
ちょうど、両手を括っていた武史のベルトのバックルが額にあたった。
「うわっ」
武史は畳の上で今度は顔を押さえていた。
股間と額の痛みで、武史はすぐには動けなかった。
美紀子は立ち上がり、もたつきながらも、廊下を走り抜け、玄関へ降りた。
美紀子は裸だったが、逃げなくては、という気持ちで必死だった。
玄関のドアを開けようとしたが、鍵とドアチェーンがかかっていた。両手が括られていて、しかもシャツの中なので上手く動かせない。
「まてぇ」
後ろから武史がヨタヨタと歩いてきた。
美紀子は、武史をかわし、素早くキッチンに戻り、スマホを手にして浴室に駆け込んだ。
ドアを閉め、鍵をかけた。
不自由な手でスマホを操作しかけたときだった。
武史が浴室のドアを蹴ったのだ。
プラスチックできた内鍵はあっけなくはじけ飛んだ。
「あっ!」
ドアが開き、その向こうに武史の顔が見えた瞬間、美紀子は青ざめた。
額から血を流し、もの凄い形相で、美紀子を睨んでいたからだ。
「残念だったな」
武史を見つめる美紀子のどんよりとした絶望的な瞳が印象的だった。
(可愛い見かけと違って、意外と気が強い、油断できない女だ。……だけど、いたぶりがいがありそうだ)
茫然としている美紀子の手からスマホを奪い取ると、浴槽の中に投げ込んだ。スマホは残り湯が張ってある中に沈んでいった。