動き-7
「いやぁ……身体はいやぁ。
身体はっ!……ぜったい駄目よ」
「僕、……奥さんの身体なんて言いました?
もしかして……この前のご主人とのセックス、……ご主人との3回じゃ満足できなかったんですか?」
「なんてことを……」
「僕は……奥さんの身体のことなんて一言も言っていないのに、奥さんが勝手に言い出したんですよ」
「だって、……そんな目をしていたじゃない」
「あれぇ、ひどいなぁ。
もしかして、奥さん。……旦那さんが帰っちゃったんで欲求不満なんでしょ。
それとも、先日のセックスでは物足りなかったのかな?
いや、逝きたりなかったのかなぁ?
もしかして、何かを期待してるんじゃない?
だって、こんな動画を見てるんだもの」
「……」
武史は、マウスを使って、音量を大きくした。
パソコンから、女の喘ぐ声とリズミカルな湿った淫猥な音が部屋に響いた。
「いや。やめて」
「恥ずかしいんですか?
今から一人で、心いくまでしようと思っていたんでしょ?
だから、パンティを脱いだんじゃないですか?
ねぇ、指の匂いを嗅がせてください。それですべてがわかります」
「……」
美紀子は真っ赤になって答えなかった。
「ねっ……すばりでしょう」
「何を……言うの?」
やっとのことで声を出した。
「わかってるんですよ。……奥さんのことならだいたいわかってるんですよ」
「そんな……」
「危険日をあてましょうか?」
「何を言い出すの」
「そうそう、この前の奥さんの生理の日をあてましょうか?」
「いやっ……もう、出て行って」
美紀子はすっかり動転していた。しどろもどろに答えながら、少しずつ両手で顔を隠している。
「そんな……いつもゴミ袋の中を見てたのね」
「ええ……今日あたりが危険日なんですよね。
だから、ご主人としたときはゴムを付けていた」
「いやぁっ……どこかへ行って、もうこないでよ」
美紀子は腰を落として床に座り込んでしまった。
「危険日って、……男が欲しくなる日の裏返しってことですよね」
「いやぁ」
「今の奥さんの股ぐらは、このポリ袋のパンティの内側と同じですよね」
「……」
「トロトロとした愛液が滲み出してるんじゃないですか?
いや、愛液をダラダラと滴らせていたのかも。
どうしても赤ちゃんを作りたくなるんですよね?」
「こないで……いやぁ……こないで」
両手で股間を押さえて、座って叫ぶ美紀子に近寄った。
「奥さん!もう、濡れてるんでしょ?」
武史は奥さんの耳元で囁いた。
パソコンからは、女のアクメの声が聞こえてくる。
武史を避けようと挙げた右手を武史は左手で掴み、武史は右手で美紀子の後頭部をつかみ、さっと唇を重ねた。
「うううぅ……あああ」
唇に唇を被せた。美紀子は歯を食いしばって耐えている。
「ううっ」
右手を後頭部にあてたまま、今度は左手で鼻を摘む。唇が開くのは時間の問題だった。
「……」
武史の唇の中で美紀子の唇が開いた。すかさず、息を吹き込んだ。
「ううううっ……」
そして美紀子の発する叫び声と共に、今度は息を吸い込んだ。武史の胸が美紀子の発する声で共鳴する。暖かい美紀子の胸の中の空気を吸い込んだ。美紀子と一体化した気持ちで充実した。
(とうとう、美紀子とキスできた。なんて柔らかい唇なんだ)
美紀子の唾液が武史の口に移る。ほのかな口臭が鼻を突く。
(一人でいじっていたんだな?……強い性器臭が感じられるなぁ)
「ううう」
美紀子の肺から空気がどんどん吸い出される。
声が呻きになって残りの空気と一緒に出てきた。
「うっ……うっ……」
美紀子の顔が真っ赤になっている。肺の空気が全部吸い出されてしまって、息が出来ないのだ。
次に、武史は鼻から空気を一杯吸い、反対に空気を吹き入れた。声もなく美紀子はむさぼるように吸い込んでいる。
また空気を吸い出す。そして美紀子の胸が空になると空気を入れる。それを繰り返す。
武史のペースで美紀子の呼吸をコントロールする。
しだいに、美紀子の頭の中が真っ白になっていった。