動き-3
美紀子の入浴は、週末以外は、美穂と一緒に入っていた。美穂の高いトーンの声が響くのでよくわかった。
「ねぇ、ママ。……また、おじいちゃんの家に泊まりにいってもいい?」
「いいわよ。……いつも何して遊んでるの?」
「晴れた日は外で遊ぶんだよ。
あれっ。……ママは、今日は一緒にお風呂の中に入らないの?」
「ああ、そうね。……今日は、入れないのよ。だから、シャワーだけにしておくの」
「ふぅん、わかったわ」
(ああっ、そうか。……今日は生理なんだ)
「美穂は三十まで数えたら、上がるのよ。外で待ってるから……」
「はい。……じゃぁ、数えるわね」
新しい発見をするたびに、美紀子に少しずつ近づいたようで、気持ちがますます昂まっていった。
トイレの排気口から喘ぎ声のような咳が聞こえたときなどは、思わず硬直を握りしめ、その場で下着の中で射精したこともあった。
この頃になると、美紀子を自分のモノにしたいという、いつもそんな思いに駆られていた。
密かに撮った美紀子の写真に、寄せ集めた裸のパーツを重ねて勝手にコラボのヌード写真を作ったりもした。
(なんてかわいいんだ。……絶対に,俺のものに……俺の美紀子……)
美紀子を自分のモノにするという誓いを立てていた。
春になり、薄着の季節になった。
美紀子が玄関先に姿を見せるときがあったが、いっそう用心深かくなっていた。一人暮らしが続いているせいだろう。
人目のほとんど無い、薄暗い早朝のゴミ捨てひとつにしても、肌はおろか下着のラインすら見せることはしなかった。
また、清々しい日中であっても、一階の窓が開くのを見たことはなかった。
屋外の物干しにはシーツやタオル以外、身につける衣類を見ることは一度も無かった。
そんな美紀子に寄せる気持ちがますます募ってきた。
この頃から、武史は時々美紀子が捨てるゴミ袋を持ち帰っては、中身を漁るようになっていた。
袋の中身から美紀子の生活がだんだんわかるようになってきた。
そして、ゴミの中から、初めて使用済みナプキンを見つけたときは、気も狂わんばかりだった。
美紀子の秘密に近づいたうれしさでいっぱいだった。
新聞紙に包まれた黒いポリ袋の中に、おりもの専用のライナーや使用済みナプキンがタップリ詰まっていた。
たぶん、汚物入れが一杯になってから捨てたのだろう。
震える手で、丸まっているナプキンをていねいに拡げていくと、そこには舟形の汚れが現れてきた。
女性器のカーブに合わせ、内側によれて、陰列の長さだけ凹んでいた。一日かけて、生理期間の順にナプキンを並べて鑑賞した。
出血の多い日を挟んだ前後のナプキンからは、美紀子の陰唇の形が拓本を採ったようにわかるものがあった。
また、付着していた陰毛も何本か手に入った。どれも長めだが、あまり縮れて無く、柔らかかった。
さらに、ライナーからは、美紀子の日常が感じられた。三色の染みが付いていた。前の方から小さい円形の褐色のシミ、それに続く縦長の薄黄色の乾いて光るシミ、そこから数センチ下がったところに焦げ茶色の花状シミだった。どのライナーにも同じようなシミがあり、内側に折れていた。
これらの宝の山を目の前にして、その日は大学に行くこともせず、出せるものが無くなって動けなくなるまで、トコトン自慰に浸った。
ゴミを漁ったおかげで、とうとう美紀子の生理日と危険日までをも計算できるまでになった。
それから推測すると今日前後が排卵日のはずだった。
(旦那はまた、しばらくは帰ってこない)
(娘も今日は泊まりに行ってる)
(排卵日で、発情している)
(よし、決行は今日だ。俺一人でやるんだ)
友人の幹哉は巻き添えにしたくないし、武史だけの楽しみとすることを決めた。
武史は早朝のベッドの中で微睡みながら丹念に計画を練りはじめた。