「秋男は死なない」-2
どうせバイト先から美香ちゃんがいなくなるなら、僕の世界にも光は無くなってしまうんだから。
僕の21年間の人生、最後にして最大のイベントとして美香ちゃんに思いをぶつけてきます。
というわけで、僕はまず遺書を書きました。美香ちゃんの告白後、その足で死ぬことができるように、です。
まぁ書きながら、本当に死ぬ気があるのかと言われれば、それはちょっと…って言う気もします。
死ぬことはいつでも出来るんです。要は、自分が行動するかどうかです。死ぬ気でやれば、なんでも出来そうな気がします。
遺書を書き上げました。内容を読み上げます。
『生きていても楽しくないので死にます。先立つ不幸をお許しください。ちなみに、僕の死は同じバイト先の仲澤美香ちゃんとは何も関係がありません。美香ちゃんを責めないでください。田淵秋男』
他に書くことはないか考えたけれど、そもそもこの世に何も思い入れのあるものが無い。
あると言えば美香ちゃんだけで、その美香ちゃんももうすぐいなくなる。
僕は今日告白することを決心してバイト先にむかいました。
遺書はカバンに入れてあります。
「ありがとうございました〜」
閉店時間が来て店を閉めていたら美香ちゃんが僕に話し掛けました。
「田淵さん…今日、バイト終わったら話したいことがあるんですけど、お時間空いてますか?」
僕の胸は今まで感じたことが無いくらいドキドキしていました。
「あ、はい」
と、言いたいんですが上手く言えません。口から出る言葉がうわずって呼吸困難になりそうです。
うなずくだけうなずいて、レジのお金を数えにかかりました。
「おつかれさまです」
バイトはいつもどおりに終わりました。
僕は美香ちゃんを待ちます。
美香ちゃんが僕に告白してくれるのかな、という淡い期待もします。もちろん、自分から言う覚悟はあります。
「スイマセン、お待たせしました」
僕と美香ちゃんは近くの公園へむかいました。僕の手はもう汗びっしょりで、何度も何度もズボンで汗を拭き取ります。
「あの…田淵さん、すいません…」
美香ちゃんにいきなり謝られました。まだ、告白もしていないのに。