気力と体力-2
<マサさん、ここでは拙いから、少し歩きませんか?>
ジムの入り口ですから、礼子の言う事は解ります。
マサと礼子は少し、距離を置いて、歩き出しました。
5分程歩いて、礼子が振り返ります。
少し考えてから、礼子の口が開きました。
<マサさん、車ですか?>
(そうです、礼子さんは?)
<私は自転車です。マサさんどんな車なの?>
(ワンボックスですよ)
<じゃあ、自転車乗せられるよね>
(楽勝ですよ、仕事柄荷物を運ぶ事も有るから、後ろはシートを畳んで有るから)
もう、礼子は、誘いに乗って来るとマサは思いました。
マサは、強引に、車を取って来るから、礼子さんも自転車取って来て、この先の交差点で待ってて下さいと礼子に言い、返事も聞かずに、走り始めました。
<あっ、マサさん>
礼子の声が聞こえましたが、マサは無視して、駐車場に向かい、車を出して、交差点まで行きます。既に礼子は来ていました。スポーツ用の自転車です。
マサは、到着後直ぐに、礼子から自転車を取り、後ろに乗せました。
(行きましょう)
<あっ、は、はい>
余りのマサの行動の素早さに、呆れてる様子です。マサは助手席のドアを開けて、礼子を乗せてから、運転席に入りました。
(礼子さん、何食べたいですか?俺は何でも大丈夫)
<私、早上がりの時は、焼肉と決めてるんです。良いですか>
(了解、隣町に、上手い和牛の店が有るから、そこへ行きましょう)
マサは車を走らせます。30分程度で到着です。
(ここなら、知り合いに会う可能性は低いと思うよ、一切宣伝もしてない店だから)
<こんなさびれた所に、焼肉屋さんが有るなんて、解らないね>
(ここの大将は、その日出す肉だけ、朝に捌いて来るから、殆ど生でも食べれる位、新鮮です)
見せに入り、また礼子がビックリしました。なんせ、全室個室の焼肉屋さんなんて、有るんだと驚いています。
マサは、大将に声を掛けると、一番奥の部屋へ誘導してくれました。
好きな物頼んで、飲み物は何にする?まぁ取り敢えずビールだね。
生中とノンアルコールビールを注文。
<私だけ飲むの悪いわ>
(大丈夫ですよ、大切な、お姫様をお送りするのに、運転手が飲んだら拙いでしょ)
(遠慮しないでジャンジャン飲んで、俺、意外にノンアル好きだから気にしないで)
(生大の方が、良かったかな、礼子さん飲めそうな感じだから)
<嫌いじゃ無いですけど、ビールは控えてます。>
(いつも何飲むの?)
<普段家では、日本酒かワイン、焼肉の時はマッコリが多いかな>
(おおっ、通ですね)
(今度は、車置いてからタクシーで飲みに行きましょう。)
お肉が運ばれて来て、礼子が手際よく焼いてくれます。
<何、このお肉、信じられない位美味しいです、驚きました>
(でしょう〜、私は特別な人と食べる時は、ここにお連れするんですよ)
<マサさん、私は特別な人では無いよ〜>
(そんな事無いですよ、一目見た時から、凄くスタイルが良くて、綺麗な人だと思いました、だから私に取っては、特別な人ですよ)
礼子は、ポッと顔を赤らめてマサの目をみます。
(何だか夢見たいです、こんな綺麗な人と、夕飯をご一緒出来るなんて・・・)
(夢なら、一生覚めないで欲しいな〜〜)
マサは自分で言ってる台詞で、お尻がこそばゆくなりました。
(さぁドンドン食べてね)
店員を呼んで、マッコリとノンアルを追加します。
<マサさん、本当にごめんなさい、私ばっかり飲んでしまって>
(何言ってるんですか、礼子さんの顔を見ながら飲んでると、ノンアルなのに、酔ってる気分ですよ>
礼子は気分を良くして、マッコリをグイグイ飲んでます。
(所で礼子さん、何処に住んでるの?)
<○○町の、××マンションです>
(え〜、めっちゃ近い、俺、△△マンションだよ)
<あら奇遇ね、歩いても5分程ですよ>
(なんだ、最初に聞けば良かったよ、じゃあ俺も飲んじゃおうかな、代行頼んだら良いから、俺の所まで行って、歩いても知れてるね)
<そうですね、飲んで下さい、一人だけ飲んでてもつまらないわ>
店員さん、マッコリ追加ね。
礼子は、一人でボトル1本空けて、完全に酔ってます。
それから2人は、色んな事を話しました。
(礼子さん、なんで体育教師止めたの)
礼子の顔が、一瞬強張りました。
<実話ね・・・>