備品の日常-1
■視点 岡田香澄
ジリリリリリ!
けたたましい音をあげる枕元の目覚ましが、私をまどろみの中から引き上げた。
「ん、ぅん……。」
鳴り響く目覚まし時計を疎ましく思いながら、重い瞼を閉じたまま、右手を伸ばしてそれを止める。すると、今度は携帯電話のアラームが、私の耳元で鳴り響く。
「むぅ……起きる……。」
自分に宣言することで、眠気で重い頭を指で押さえながら、何とか体を起こすことができた。携帯電話を手に取り、アラームを止める。
時刻は六時半。学生時代は学校が近かったこともあって、まだ寝ていた時間だ。しかし社会人になりニヶ月半もたてば、体はその生活に慣れてきたようで、苦もなく起きれるようになった。
しかし、どうしても慣れることのできないこともある。
先月末に行われた新人歓迎会。そこで私は物のように扱われた。いや、物となったのだ。男達の性欲を受け止めるための道具に。体の自由を奪われた私は、社員全員から好き放題にされた。
そしてそれは、新人歓迎会以降も行われている。正確に言えば新人歓迎会ほど激しいことをされることはない。それでも私の生活は、恥辱と屈辱まみれのものへと変わった。
「行きたくないな、会社……やめちゃいたい。」
裕福とは言えない家庭を思えば、辞めることなんてできない。それでも毎朝毎朝、口にしてしまうのだった。