備品の日常-4
■視点 岡田香澄
駅を出て徒歩五分ほどで会社に着く。私はその入り口で足を止めた。できることなら回れ右して、そのまま帰路につきたい。そんな気分にかられる。
「どうしたの?ほら、早く行くよ。」
皆藤さんに背中、というかお尻を押され、会社へと入る。
始業のベルと共に、毎日行われる朝礼が始まる。連絡事項、本日の来客予定、社員の休みの連絡が終わると解散だ。
しかし、今日はその後があった。
「おや、今日の岡田さんの私服はいつもと違うね。」
社長の言葉に、社員の視線が私の全身を舐め回すように見る。
「ほら、前に来て。せっかくだから、みんなに見てもらわなきゃ、もったいないよ。」
「け、結構です。」
前に出れば、何かをされる。分かっているから、咄嗟に拒否をしてしまった。
「前に、来い、と私は言っているんだがね、岡田さん。」
有無を言わせぬ物言いに、諦めてみんなの前に立つ。たくさんの視線が全身を這う。
「その場で回るんだ。」
言われるままに、ゆっくりと回る。スカートが翻らないように、細心の注意をはらって。
「こんな短いスカートのときは、その中はどうしてるのか気になるなぁ。」
嫌な流れだ。どうせ見せろと言うに決まっている。でも、今は見られたくない。だって、まだ……。
「……別に、普通です。」
思わず、回答にならない回答が口から出る。
「どう普通なのか、スカートを捲って、みんなに見せるんだ。」
やっぱりだ……震える両手で、スカートの裾を掴む。しかし、そのまま動けなくなる。いっそ、このまま時間切れで解散にならないだろうか。
しかし、そう甘くはなかった。
「仕方ないな、手伝ってやれ。」
近くにいた一人が、私の両手首を掴むと、Yの字の状態にさせられる。
「離して、いやっ!」
そして、また別の一人がスカートをゆっくりと捲っていく。
「や、やめ……お願い……あ、あぁ……。」
スカートの裾が大きく捲られ、同僚の視線が下半身に集まるのが分かる。
「おいおい、なんか濡れてね?」
「まじか、ぐっしょぐしょじゃん。陰毛透けてるし。」
「どうりでメスの匂いがすると思った。」
「あんな短いスカート履いて、何を考えてあんなに濡らしたんだろうな。」
彼らの言葉に恥ずかしめられ、瞼を閉じて俯いてしまう。
「言うことをすぐ聞かなかったからな、簡単な罰だ。」
社長のその言葉に、目を開けて顔を上げる。
「ご、ごめんなさい……だ、だって、下着が……。」
何をされるか分からない恐怖から、声が震える。
「そんなに恐がる必要はないよ。なに、痛いことはしないんだから、怯えることはないからね。」
「ひっ……。」
社長が持ってきたものを見て、体がこわばるのが分かった。それは男根の形をした、知識としてしか知らないもの。バイブだ。
「い、いや……許して、ちゃんと言うことききますから……。」
「これぐらいのもので、こんなに怯えるなんて、これから先やっていけるのか?楽しむぐらいの余裕を見せて貰わんとな 。」
社長の手がショーツを掴むと、一気に降ろされた。
「いやっ!離して!み、見ないで!」
力の限り暴れるが、びくともしない。こんなことをしても喜ばせるだけだと分かっているが、抵抗せずにはいられなかった。
「何を恥ずかしがってるんだ。ここにいる者たちはみんな、岡田さんのマ◯コを見てるんだ。中には岡田さんすら見たことのない、穴の奥の奥まで見たのもいるんだぞ。」
「やめて!聞きたくない!」
大きくかぶりを振り、大きな声を出す。そうすることでしか、耳を塞げない私に、拒絶する術はなかった。
股間に冷たいものがあてがわれる。
「ひっ……い、いや……。」
「中は十分濡れているだろ。」
ゆっくりとバイブが、中へと進入してくる。
「や、やだ……ひぅ……んっ、やめ、て……。」
進入されてしまえば、抵抗する術はない。入ってくる異物感に、必死に耐える。
奥まで挿入されると、社長はバイブから手を離し、ポケットからピンク色の小物を取り出した。
「岡田さんの大好きな、ピンクのローターだ。これも付けてあげようね。」
「あ、や、やだ……。」
首を振って拒絶の意を示すが、社長の手慣れた手つきで、クリトリスにローターがテープで固定される。
バイブのスイッチが入ると、急激に与えられる快楽に、体がびくんと跳ねる。
「ひぅあ!や、とめ、て……んぅ!」
初めての快楽に、頭が真っ白になった。下腹部が熱くなり、立っていることが辛くなる。
社長は、その様子に満足そうに頷くと、ショーツを履かせる。そして、今度はローターのスイッチが入れられた。
「ひぁっ!あ、だ、だめ……と、とめ……。」
「スイッチを止めたり外したりしたら、お仕置きだからね。」
いつの間にか手首が解放され、捲られていたスカートも戻されていた。しかし、与えられる強烈な快感に、まともに立っていることができず、その場にぺたんも座り込んでしまう。
少しでも振動を止めようと、スカートの上から股間を押さえる。自然と頬を地面につけ、股間を押さえたまま、お尻を上げる。
後ろから見たら、どんな猥らな格好に見えることだろう。分かっていてもどうすることも出来なかった。聞こえてくる卑猥な言葉と、携帯のシャッター音に、唇を噛み締めながら快感に耐え、涙を流すしかなかった。