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塾の時間
【学園物 官能小説】

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塾の時間-1

「うわっ、夕陽が綺麗…」
 御津蔵はるひは鉛筆のお尻をかじりながら呟いた。窓の外には山の端いっぱいに巨大な夕陽が輝いていた。照り返しを受けて茜色に輝く雲は夜の菫色と混じり合い、ビルの谷間を彩っている。
「おい、御津蔵、今はテスト中だぞ」
 突然に声を掛けられ、弾かれたように驚くはるひ。振り返ると試験官が立っており、視線を机の上に戻すと、目の前のテストは完全に白紙状態であった。残酷な運命の悪戯に、思わず頭を抱えるはるひ。
「あうう、私、数字アレルギーなのに〜ぃっ!」
 はるひが今テストを受けているのは有名な進学塾で、難関有名校に合格者を毎年何名も輩出している。また生徒の数も多く、生徒の学力に合わせてAからDまでクラス分けがされており、C、Dクラスともなれば同じ塾内でも学力が随分と違う。はるひがいるのはBクラスであったが、はるひは最近学力が落ちており、このクラス分けのテストで頑張らなければCクラス転落は必至であった。
「Cクラス転落にでもなれば、ママに殺されるかも…」
 一瞬にして現実に引き戻され、必死にテストと格闘するはるひ。実はこの塾に入った当初は、はるひはAクラスであった。それが、塾の雰囲気に圧倒されたのか、萎縮してしまい、勉強にも身が入らなくなっていた。それからなんとなくだらだらと過ごすようになり、ついにはBクラスに転落してしまったのである。その時、母親は随分と激怒し、はるひは長々と説教された挙句、次のクラス分けテストではAクラスに復帰するという約束をさせられてしまった。もちろん、殺されるというのは比喩的表現であったが、はるひの母親はそれが冗談では済まされないくらいに教育熱心で、試験の成績が悪いと何日も部屋に閉じ込められ、缶詰状態で勉強させられたこともあった。はるひはそれが自分を思うあまりのことだと理解し、それに応えられるよう勉強をして、なんとかこの塾のAクラスに入学できたのだ。
 ところが、一度着いた怠け癖はそう簡単に戻らず、また、頑張らなければならないと、気負えば気負うほど、気持ちばかりが空回りしてしまい、今やAクラスどころか、Bクラスも危うい状況にまでなっていた。
 数時間後、はるひは暗鬱な気持ちで筆記用具を片付けていた。窓の向こうは既に暗闇に沈んでおり、街明かりが澱んだ光を垂れ流している。
 するとそこへ、Bクラス担任講師の依田が教室に戻ってきた。
「おい、御津蔵。テストのことで話があるから面談室までちょっと来てくれ」
 依田の言葉に、はるひの心臓は凍りついた。テストの出来が悪いとは思っていたが、こんなにも早く引導を渡されるとは。
「……あ、はい」
 言葉少なに応じるはるひ。
 面談室に向かう廊下は誰も帰宅の生徒ばかりで、はるひは重い足取りでその人の波を遡って行った。
 人気の少なくなった面談室の前では依田がはるひを待ち構えている。深々と溜息をつくはるひ。
「すまんな、こんな時間に…」
 依田はそう言うと、汚れた眼鏡の奥から打ちひしがれたはるひの様子を上から下までしげしげと眺めた。値踏みするような、舐めるようないやな視線である。
 するとそこへ、職員室から他の講師達がぞろぞろと出てきた。皆、手に荷物を持ち、どうやら帰宅するようであった。
「依田さん、それじゃあ警備システムのセット、お願いしましたよ」
 講師の一人が依田にそう話し掛けると、依田はカードキーを出してそれに応じた。
「ああ、戸締りはしておきますよ。私もこの子に二・三、話をしたらすぐに帰りますし」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
 講師達はそう言って立ち去り、依田はカードキーをポケットに戻す。はるひは緊張してその様子を見ていたが、誰もいなくなると塾の様子が急に寂しげに見えて更に不安になった。遠くの方ではまだ生徒達の騒ぐ声が聞こえるが、次第にそれも遠ざかっていく。
「まあ、立ち話もなんだから中へ入ってくれ」
 依田はそう言うと、はるひの肩に手を置いて面談室の中へ招き入れた。
「まあ、座れ」
 そう言って、黒い革張りのソファーにはるひを座らせると、依田はわざとらしく咳払いをして反対側に腰を下ろす。
「まだ全部の集計はしていないんだがな、大体の成績は出てる」
 依田の言葉に、はるひの肩がぴくりと震える。
「あの、私、Cクラスに転落ですか?」
 勇気を振り絞り、おずおずと尋ねるはるひ。依田は溜息をつくと、勿体ぶって応じる。
「ふーむ、そうだなぁ。まだはっきりとは言えないが、恐らくは…」
 依田はそう言いながら、向かいに座るはるひの身体をいやらしい目で舐め回す。デニムのシャツの胸元は柔らかく膨らみ、赤いチェックのミニスカートから除く太股は白く滑らかで、依田はその太股の奥にあるものを想像し、股間を熱くした。


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