お姉ちゃんの絞り汁-5
やがて食事の用意ができ、二人は向かい合って食事を始めた。
それは、奇妙にぎこちないものであった。何か話をしなければと思う姉に対して、弟はろくに返事を返さず、噛み合わない会話が途切れ途切れに続く。
そうして、味もろくに分からないまま二人は食事を終え、宇佐美は後片付けに再び台所に立った。
「………お姉ちゃん」
不意に背後に立たれ、宇佐美は驚いて振り返った。
「け、健太郎、吃驚させないでよ……」
濡れた手を拭きながら、苦笑いする宇佐美。
「昼間、父さんの部屋に行ったんだけど、段ボールの忘れ物があるんだ。大事な物なら送ってあげないと……」
健太郎は姉の驚いた様子に頓着もせず、そう切り出した。
「あ、え?あ、えっと、そうなの?あの、あ、中身は何?」
狼狽えながらもそう応じる宇佐美。弟と視線が合わせられず、思わず目が泳いでしまう。
「分からないよ。リビングに持ってきておくから、後で見ておいて」
そう言うと健太郎は荷物を取りに父親の書斎に向かった。両親のスワッピングビデオを取りに。