お姉ちゃんの絞り汁-4
宇佐美が買い物から戻ってきたときには、健太郎は既に自室に戻っていた。人気のないリビングには、つけっぱなしのテレビがサンドノイズを映し出している。
宇佐美は小さく溜息をつくと、テレビの電源を切った。急に辺りが静寂に包まれ、少し寂しく感じるが、なんとなく気まずさを感じ、健太郎と顔を合わせたくなかった宇佐美はかえってほっとした。そして、台所に立つと夕食の支度を始める宇佐美。
そこへ、階段を降りる音がして、健太郎がリビングへやって来た。
鼻歌なんかを唄っていた宇佐美であったが、足音がした途端ぎくりとして手が止まる。
「け、健太郎、今日はビーフシチューにするけど、それでよかった?」
戸惑いながらも弟に声をかける宇佐美。どういう訳か心臓が高鳴り、顔が赤くなる。
「あ、うん。好きだから、……ビーフシチュー」
姉の後ろ姿を見ながら、健太郎は言葉少なに応じた。どうしても先程見たビデオのことが頭から離れず、平常心を保てない。
宇佐美が後ろを向いているのは健太郎にとって幸いで、何気ない風を装いながらリビングに座ると、テレビをつけた。
見る気もないニュースを流しながら、健太郎の視線は姉の後ろ姿に釘付けになっていた。 鼻歌を唄いながら台所に立つ姉の姿が裸に見えてくる。デニムのミニスカートの奥で揺れる柔らかなお尻、その奥にある匂い立つ花園を夢想し、健太郎は慌ててかぶりを振った。 今まで姉をそんな風に見たことはなかった。どんな恰好をしていようとそれは肉親以外の何者でもなかったのだ。しかし、今は、台所に立つ宇佐美は甘い性臭を発散させる女であった。そして、その清楚なエプロン姿の奥には淫靡な女の身体を隠しているのである。
健太郎は頭を下げ、そっと姉のスカートの中を覗いて見た。そこには小さなショーツに包まれた丸いお尻が蠢いていて、その奥にはビデオで見たようないやらしい花が、蜜を湛えて男のモノを待ち構えているのだ。
小さく、可憐な後ろ姿を、健太郎は押し倒したい衝動に駆られたが、宇佐美が後ろ振り返りそうな気配を見せたので、慌てて知らぬ風を装った。
しかし、宇佐美は振り返らなかった。いや、振り返れなかったと言った方が正しい。健太郎がスカートの中を覗き込んでいたことを知っていたわけではなかったが、人間の視線には奇妙な気配があり、宇佐美はそれを敏感に感じ取ったのだ。なにかいつもと違う気配を感じながら、健太郎に対する奇妙なわだかまりも手伝って、宇佐美は後ろ振り返ることが出来なかった。そして、思わぬ言葉を口走る宇佐美。
「こ、こうして二人でいると、なんだか新婚さんみたいだね……」
自分の言葉に驚く宇佐美。健太郎が笑い飛ばしてくれればただの冗談事で済むのだが、健太郎は姉の言葉に対して返事を返さなかった。
「(うあ〜〜、私、何言ってんだろう??健太郎、聞こえなかったのかな?なら良いけど)」
宇佐美がこっそり後ろ振り返ると、健太郎はテレビを見ていて、こちらに気が付いた様子はない。ほっと安堵の胸をなで下ろす宇佐美。