と-5
「寝ろ」
そういわれてうとうとしたと思ったら
2時間は寝ていたようで。
ベッドの横で、胡坐をかいて腕を組んで
こっくりこっくりとうたた寝をしている先輩がいた。
部屋を見回せば奇麗になっていて
治ったら一気に洗おうと思っていた流しもきれいに片付いていた。
枕元に置いた携帯を改めて見れば
先輩の不在通知は2〜3時間おきに鳴っていたようで
夜は1時ぐらいまで、朝は5時から鳴っていたようだ。
「俺がどれだけ心配していたか分かったか」
静かに言われたその声に、ビクッとして
先輩のほうを見れば、さっきまで寝ていたのに
起きて私をにらんでいた。
「え・・・」
「あの電話―――誰だか分ってるんだろ?」
先輩はあの日のあの電話を言っていた。
「・・・・」
「あの電話の次の日から桃花が大学に来なくなって
俺が心配してるとは思わないのか?」
「・・・・」
「なんか言えよ」
「あの・・・」
「うん」
「終わりですか?」
ヤバイ。また涙が出てきた。
「だから電話に出なかったのか?」
私の疑問には答えてくれなくて
「体調が悪いのに、別れ話はキツイな・・・と思ったもので」
「ふ〜ん・・・」
そういって私の額に手をかざして
「まだ熱はちょっとあるな」
と、小さくつぶやく。
「あの電話が誰なのか、は分かりました。やり直すのかなと思って」
「で?俺がそう言ったら、はいそうですか、って?」
「この付き合いは、先輩に好きな子ができるまで、ですから・・・」
「だから?」
「先輩があの人を忘れていないのは分かってましたし。
もし、あの人がやり直そうと言ってきたら、そうするでしょうし」