と-2
その日の夜遅くに電話の着信音が鳴った。
待ち受けを見ると登録されていない番号で・・・
先輩だっ!
だれだかすぐに分かったその直感に可笑しくなる。
番号なんか知らない癖に・・・
初めての電話は嬉しさより怖さが勝った。
どんな話をされるのかわからない恐怖で出ることはできない。
もし、もし今外に出て来いと言われたら。
きっと私は、辛い身体を隠して支度をして
わざわざフラれに行くんだろう。
それともあっさり電話で終わりを告げられるのか。
「俺に好きな子が出来るまで」
そう決めた先輩との付き合いは、先輩の一方的な感情で終了する。
先輩からの初めての電話に、その着信音が鳴りやむまで聞いていた。
涙が一粒すっと流れて枕に吸い込まれる。
今は風邪で気持ちが弱っているだけ。
積極的に治そうとしない身体は2日たっても熱が引かなくて
いよいよ家に食べるものもなくなって
仕方なく、絵里に電話をした。
とっくに切れている携帯の充電は
電気に差し込んだとたんに何件もの不在通知を表示して
そのすべてが未登録の番号なことに
喜んでいいのか、悲しいんでいいのかわからなかった。
とりあえず、絵里に電話しないと。
そう思って番号をタップすると、慌てた調子で絵里が電話口に出た。
「桃花!あんたここ数日どうしたの?」