前章(三)-12
「じゃあ、頼んだよ」
伝一郎の部屋を出た所で夕子は、大きな溜め息を吐いた。漸く、解放された事もそうだが、自分の内面の全てを暴かれてしまった事に、暗澹(あんたん)足る思いが頭を過ったからだ。
──此のままでは何れ、此の街に居られなくなってしまう。私だけで無く、家族迄も……。
階下へと向かい乍ら、夕子は思う。此の結末を如何様に着ければ、良いのかと。しかし、浮かんで来た答えは、残酷なものだった。
「伝一郎様……」
夕子は、伝一郎の寝間着を抱き締め、顔を埋めた。想い人の残り香に包まれまがら、彼女は泣いていた。
「ガラパゴス・ファミリー」前章(三)
完
※1科人 :過去に犯罪を冒した者
※2賤人 :部落民
※3朝鮮人:分断前の出稼ぎ者
※4女門:子宮口
※5吉門:クリ○リス