27.うんち掃除-3
……。
『詭便検査』
周囲に気取られないよう、さりげなく脱糞できるかどうかをチェックする。 というのも、排便の度にキバったり、ウンウンと便秘気味に息んだりする様子は、気張っている本人はさておき、視界に入れた方が恥ずかしくなる。 みっともなさすぎる振舞は、見ている側に不愉快な感情を抱かせるためだ。 あくまで『ぶりぶりマスター』なのだから、排便は日常のメインテーマで、さらりと脱糞してしかるべきだ。 機械と接続する生体部品として活動するためにも、一々脱糞ごときに感情や行動を持ち込まれたくない。 規定された排便をあくまで淡々とこなす姿勢が『ぶりぶりマスター』の条件といえよう。
お腹をパンパンにしてしまうと便圧のコントロールが難しいため、少女たちに給餌された分量は腹八分目に抑えてある。 恐らく少女のお腹の中に巻いているくっさいとぐろは、分量にして3、4キロといったところか。
検査に際し、少女たちは拘束机から下り、さきほど『踊便』に励んだフリースペースに移動した。 目隠し、箝口具をはじめ、少女たちの拘束具は全て取り除かれ、一糸まとわぬ全裸姿だ。 フリースペースには人数分の机と椅子が置かれ、それぞれの机上には文庫小説が1冊置いてあった。 普通と少し違うのは、椅子には中央に穴が空いており、穴の直下にいつものオマルが据えてある点だろう。
教室には監視カメラが、少女全員の裸な上半身を捉えている。 机に隠れた下半身はその限りではない。 少女たちは10数日ぶりに解放された視覚でもって小説を静かに黙読している。 そんな中、監督しているひなこから『制限時間1時間。 脱糞開始』と告げられた。
「……」
シーン。 教室は静まり返り、少女たちは、少なくとも表面上は落ち着いて手許のページを繰る。
「……」
シーン……このまま静寂が続くかと思うと、どこかで
コトン。
何かが落下した気配だ。 ただし誰の椅子から聞こえたかまでは分からない。 音は、フリースペース中央でウン子10号が放った便塊だ。 けれども、少女にイキむ様子もキバる気配もなかった上に、排泄音もスカしており、監視カメラは少女の排泄を感知しなかった。 最初の1人に続けとばかり、アチコチから、
コロン……ベチャッ……ボトリ……。
静かに読書に励む雰囲気にそぐわない、下品な音が耳に届く。 もっとも排泄時の『ムリムリッ』『ミシミシッ』という肛門が軋む音色に比べれば、便塊がオマルに落下する音など可愛いものだ。 少女たちは誰もが我関せずと、淡々と読書する上半身を演出していた。 下半身は、いかに音をたてまい、オナラを出すまい、上品かつ御淑やかに脱糞しようと、ピリピリに緊張しきっている。 その上で、少女たちは顔は涼し気、目は本のページを優雅に上下し、自分が全裸であることを忘れたかのように落ち着いて振舞うのだから大したものだ。 監視カメラの自動認証が脱糞兆候を捉えた場合、その少女の番号を放送する決まりになっているが、まだ誰も放送されていない。
少女がシラッと脱糞して咎められない背後には、ひなこによるアドバイスがあった。 座る時点で大股開きに足を拡げ、背筋を反らして椅子の穴にお尻を嵌めておく。 即ち最初から全力でお尻をウンチング・スタイルに近づけておき、いつでも脱糞できるよう肛門は半ば開くようにとの内容だ。 こうしておいた上で『検査開始』を迎えれば、既に脱糞直前なのだから、いざ脱糞する段に改めて姿勢を動かす必要がない。 監視カメラは脱糞前後の変化を捉えて放送するため、前述の工夫は変化をなくしカメラを誤魔化す効果で、ひなこのアドバイスは理に適っていた。
「……」
無言。 全員全裸なことを除けば厳粛な図書館と変わらない。 そんな中、
コロン……ベチャリ……ボトン……。
あちこちで便がオマルに溜まってゆく。
ほんの少し前までは、少女たちにとって『排便』とは今と全く違った意味があった。 他人には絶対に見られたくない、自分のもっとも恥ずかしい、無様で、下品な行為。 ひっそりとトイレに籠って自分と向き合い、恥ずかしさから目を背けておこなう、くっさい生理現象だった。 それがいまでは、まるで自分にとって排便姿を晒すことなど何の抵抗もないかのよう。 読書の片手間に、ブリッ、ポトリと脱糞をこなす。 監視カメラすら欺く涼やかさで脱糞にいそしむ少女たちは、名実ともに『ぶりぶりマスター』に近づいているのかもしれない。
少女たちの脱糞地獄、まだまだ始まったばかりである。