3-2
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気付けば俺達は、とあるラブホのとある一室に辿り着いていた。
ラブホに入ったこともない俺が、こんなにスムーズに辿り着けるなんて。
ここに至るまでの記憶は見事なまでに曖昧になっているけど、こうして俺達がここにいるってことは、きっと上手くやったってことだ。
キョロキョロと辺りを見回してみる。
テレビドラマなんかで見るラブホに比べると、こざっぱりしていて結構シンプルなんだなってのが第一印象。
ビジネスホテルのシングルルームよりは少しだけ広くて、テレビはやたらデカくて、正直艶めかしい雰囲気はあまりない、至って普通の部屋に見えた。
でも、ビジネスホテルとは明らかに違うのは、やはりベッド。
男と女が絡み合うステージは、さすがにラブホなだけあって、かなり大きくて立派。
一際存在感を放っているソレは、何百ものカップルのセックスを見てきたのだろう。
俺達もその数にカウントされるんだと思うと、何だか変な気持ちになっていた。
「曽根さん……」
ようやく結衣さんが声を発した。
チラリと視線を横に向ければ、どことなく不安そうな彼女の顔。
もしかして、怖いのかな。
そう言えば、声も少し震えていた。
繋いでいた彼女の手は、いつの間にか俺のTシャツの裾を掴んで、俯いて。
そんな彼女の様子を見つめながら、俺はこれからどうするべきか密かに考えていた。
俺も結衣さんも、ヤるのが目的なんだから、すぐにでも押し倒してしまえばいい。
完全なる草食系の俺だけど、それなりにエロいDVDだって観てきたから、どんな流れでセックスをするのかはわかっているつもりである。
きっと前田もこの状況なら、すぐに相手に手を出すに違いない。
キスをして、ベッドに押し倒して、胸を揉む。
そう、とりあえずキスをすればいいんだと、思い出したように俺は結衣さんの両肩をグッと掴む。
突然の俺の行動に、結衣さんの身体は反射的に跳ねたけど、彼女もまた、ここまで来た意味をわかっていたので拒むなんて真似はしない。
ただ、ゆっくりと俺を見上げるその表情は、トロンと酔ったような甘えた目つきになっていて、それがあまりに色っぽかった。