2-5
結衣さんも食事を終えた所で、店員さんがドリンクを持って来てくれた。
俺がホットコーヒーで、結衣さんがアイスティー。
食器を下げてもらったテーブルは、やけに広く感じる。
俺がゆっくりとカップを口につけてコーヒーをすするのをまんじりと眺めていた結衣さん。
まるで何かタイミングを窺うかのように、俺がカチャリとソーサーにカップを置くやいなや、口を開いた。
「曽根さん」
「ん?」
「あたし、曽根さんとお友達になれて幸せです」
照れがあったのか、やや控えめな声でそれだけ言うと、慌ててグラスを両手で包んで、ズズズとアイスティーを飲み込んだ。
俯いているからどんな表情をしているのかはわからないけど、柔らかそうな髪の隙間から覗く耳が真っ赤になっているのを見ると、自然と顔がほころんでくる。
結衣さん、本当に純粋な娘なんだなぁ。
そんな彼女を見てると、友達だけで終わるのは正直イヤだ。
だけど、だからと言ってすぐ男と女の関係になるのは、軽率だとも思う。
こういう時って、男はどういう行動をすべきなんだろう。
友達といったら、俺と同じように女に縁のない奴か、はたまた前田のようにチャラチャラ遊んでばかりのナンパ男ばかりだったので、参考にもならない。
なんとか恋に発展させるには、どうすればいいんだろう。
そう考えながら、彼女の赤い耳を見つめていると、今までグラスを包んでいた手がスッと伸びてきて、俺の手を掴んだ。
その手はさっきまで汗をかいていたグラスに触れていたので、ひどく冷たく、しっとり濡れていた。
だけど、とても小さく柔らかく。
手と言う一部分だけなのに、女の子はこうも男と違うんだと思うと自然と生唾がこみ上げてくる。
いつの間にか結衣さんは、そんな俺を、ジッと見つめていた。