第三章 制裁されたハーフモデル-8
保彦はそう言って飲み口のすぐ上の雛先を弾いた。自慰で敏感になっていたクリトリスを刺激されると、
「ふあぁっ、ああ、で、出ちゃうっ……!」
汐里は奇妙な声色で全身を震わせると、ジョボッ、ジョボッとまたペットボトルを鳴らした。お茶を飲んだばかりですぐに尿意が起こるはずもなく、放尿は断続的には続かなかった。
保彦は汐里の手からペットボトルを取ると、
「ほら、見ろ。会社でこんなのにオシッコしたんだぞ、汐里は。……結構黄色いのを出すんだなぁ、キレイなOLさんでも」
と、半分まで満たされた黄金色の液体を揺らしてみせた。泡立っていく液体を見た汐里は、
「やぁっ……、も、もう許して」
としゃがんだ格好のまま、がっくりと項垂れた。
「……ああ、そうする」
汐里の言葉に保彦はあっさりとテーブルを降り、ペットボトルの蓋を締めながら、「汐里がオナニーやオシッコに夢中になってるから時間がだいぶ経っちまった。あんまり不在だと怪しまれるだろ?」
「そんなっ」
呆気無く終わりを告げられた汐里は、許してと懇願したくせにテーブルから降りようとしない。無理もない、オナニーで昂らせておきながら汐里はまだ絶頂を味わっていなかったし、いつも信じられないほど射精する土橋の男茎も、まだ毒汁を放っていなかった。
「服を着ろ」
「……」
「心配するな。もうすぐ終業だろ? 続きは仕事が終わってからだ」
そう言うと、仕事そっちのけで淫蕩に耽っていた自分に気づいて恥ずかしくなったのだろう、汐里はさっと脚を閉じると、溜息をついて片脚に残っていた衣服を身につけ始めた。
「待て」
付け根まで上げたショーツを、テーブルから降りてウエストまで引き上げようとしたところで保彦が呼び止めた。側に寄ると、いきなり下腹部へ手を差し入れる。
やっぱり犯される? 困惑と歓喜の中間の表情で見上げた汐里の顔が、
「はんっ」
と最後は恐懼に変わって、折れそうになる膝を支えようと肩にしがみついてきた。
保彦は手に忍ばせていた物を、ドロドロになっている汐里の蜜壺へグイッと押し込む。
「な、なにすん……」
「ローターは知ってるだろ? エロい汐里の仕事が終わるまで、挿れといてやるんだ。嬉しいよな?」
新宿に来る前にアダルトショップに寄って買ってきたものだ。片脚にパンツとパンストを残し、ショーツは脚の付け根で捩れた汐里は、脚を擦り合わせて下腹部を両手で抑えている。「勝手に抜いたら……、分かってるな?」
敏感になっていた場所へいきなり異物を押しこまれた衝撃が和らいでいくと、こんな物を挿れたまま仕事に戻るのかと迷っていたが、彼女のできる行動は一つしかなかった。下唇を噛んでショーツを下肢へ引き上げていく。
汐里が受け入れたことを見届けると、保彦はまだ汐里が身繕いを整えないうちから背を向けて出口へと向かった。
「あ、ま、待って」
パンストを巻いて脚に通し、最後にパンツを引き上げると、汐里は仕事をしている時と同じスタイルに戻った。だが頬が赤らんでいる上に手櫛で整えた髪はまだこめかみに張り付いている。自席に戻る前にトイレで自分を確認したほうがいいぞ、とアドバイスし、
「……おっと、忘れ物。コレもこのまま捨てるんじゃないぞ?」
とペットボトルを手渡すと汐里の顔が真っ赤になった。その顔を嗤いつつドアを開けて外に出ると、
「――しお……! ……広瀬。……それに……」
廊下へ出てすぐに、誰かから声をかけられた。涼子の時と同じ状況だが、今度は男の声だった。一人のスーツ姿が近づいてくる。
「……土橋さん」
誰だ、こいつは。
驚いているようだが、どこかしら気不味そうな彼の顔から目線を落とすと、名札には須賀と書かれていた。
思い出した。土橋はこの男とウマが合わずに休職する羽目になったのだ。
須賀は汐里と自分を交互に見ながら、
「どうしてここに居るんですか?」
と問うてきた。汐里を横目で見やると、泡立った液体が入ったペットボトルを丸裸で持っていることに気づき、サッと脇に隠している。その姿を内心面白がりながら、
「いや、総務に呼ばれて来たんですよ」
保彦は平然と言った。須賀は眉間を寄せて首を傾げ、
「でもなんで、……広瀬と?」
なぜ呼び捨てなのだろう? 保彦は違和感を覚えながらも、
「なんか、会議室の予約がバッティングしてた……のかと思ったら、いやあ、俺の勘違いでした。彼女に調べてもらったら全然違う日でしたよ。ねぇ?」
と芝居を打って汐里を向く。
「う……うん。そ、そうなんだ」
須賀は保彦の嘘を信じて鼻で溜息をつき、
「そうなんですか。しっかりしてくださいよ。ったく……」
不意に土橋を見つけた困惑を晴らして中年の部下を蔑んでくる。だが心の中では休職に追いやったことを気にしている小者ぶりがひしひしと伝わってきた。
「でも広瀬も、なんで一緒に出てくるんだ? 会議じゃないのか?」
「あ、うん。……急にね、中止になったの。私、準備して待ってたんだけどさぁ」