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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第二章 報復されたシングルマザー-27

「うああっ……、い、イッちゃぅっ!」
 涼子が十回目の絶頂を進んで告白した。もちろん約束は守って十一回目へと突入する。




 ――高校は都内に通っていたので慣れているべきなのだが、ほぼ毎日遅刻して登校していたから、真璃沙にとって満員電車を経験するのは久々だった。運悪く人身事故があってダイヤが大きく乱れており、女性専用車両が解除されていた。
 朝のラッシュを知らない真璃沙にはそれが良いことなのか悪いことなのかすらよく分からなかった。何にせよ後ろから押し込まれるように入った車内は、一度或る体勢でドアを閉められてしまっては、次の駅で再び開くまでは解けないほど人が充満していた。
(やっば、足くじきそ……)
 ミュールを履いているからバランスも取り辛い。
 これから立ち姿を一に制する仕事をしようとしている自分でも、このままではとても目的地までは持ちそうにない。真璃沙は苦笑すると、次の駅で発生したスペースに身をにじり入れ、背中を押された中年女にジロリと睨まれても平然と、中の方まで進んでいった。
(うえっ。やだなぁ、もう)
 進んでいく時に、サラリーマン連中のスーツの背中に肢体が擦れた。
 これが夏真っ盛りの汗染みたワイシャツだったりしたら、せっかく着飾ったスタイルにオヤジ臭が染みるのではないかと心配になるが、上着を着てくれているだけまだマシだろう。そう自分に言い聞かせて何とか我慢し、一つだけ空いていた吊革に掴まると安堵の息をついた。
(オッサンたち、こんな電車に毎日乗っててヤになんないのかなぁ)
 その「オッサン」には自分の父親も含まれていた。きっと周辺にいるサラリーマンとそう変わらない姿で毎朝通勤しているに違いない。
 父親が具体的にどんな仕事をしているかは理解していない。どうやら会社ではかなり偉いようだ。その証拠に裕福な暮らしをしていると思う。しかし毎日こんな苦行を強いられるなんて割に合わないのではないか。
 真璃沙は悪意をもって父親を思い出し、侮り、すると昨日の喧嘩が頭に蘇ってきて嫌な気分になった。
 今日はとある雑誌企画のオーディションがある。電車遅延と聞いて焦ったが、順調にいけば間に合いそうだ。
 父はヒスパニック系アメリカ人だが、真璃沙は日本生まれの日本育ち。美人である母親から受け継いだ容姿に、父からラテン系のエキゾチックさ。日本人顔ではない、かといって思い切り外国人顔でもない、絶妙なテイストを注入してもらった。
 肌の色がやや褐色である点は幼い頃コンプレックスだった。しかし成長するにつれて肌の色だけではなく、西洋人ならではの手足の長さが肢体をスラリと見せ、そこへくだんの大人びた顔立ちが加わると、思春期の只中で他の子よりも断然容姿に恵まれていることに気づいた。
 となると、わざわざ日焼けサロンで焼く必要もない、かつそうやって人工的に色付けた肌には無い瑞々しさが元から備わっている自分の肌は、むしろ自慢へと変わっていった。
(だいたいパパ、外人のクセに、ココロ狭すぎなんだよなぁ……)
 渋谷で遊んでいたら、やたらスカウトに声をかけられた。中には――というより殆どは、恐らくJKビジネスと言われる怪しい商売の勧誘だったに違いない。
 しかし、まさにイマドキの女子高生の姿恰好でありながら、他の子に比べて明らかに精彩を放っている真璃沙を、真っ当なスカウトマンも見逃すはずはなかった。「興味があれば連絡をして欲しい」と名刺を渡してきたのは女性、しかも真璃沙も名を知っている大手のモデル・プロダクションだった。
 勧められるままに、半ばアルバイト感覚で女子高校生向け雑誌の小特集に読者モデルとして出てみた。二カットのみの掲載で、プロフィールは年齢とイニシャルが出ただけだったが、真璃沙の身の回りのみならず、出版社にも真璃沙個人のSNSにも多くの反響があった。
 ネットでは垢抜けた容姿を讃えるコメントが多く寄せられて嬉しかったし、リアルでは凄いねと言いつつも、端々に真璃沙に対する羨望とやっかみを向けて来る子がいるのが誇らしく、心地良かった。
 次の号ではもっと出て欲しい、という出版社の意向が例の女性を通じて伝えられた。まずは母親に「やってみたい」と相談してみた。若い頃にキャンペーンガールのアルバイトをやった経験があった母親は、真璃沙がやりたいのであれば、と賛成してくれた。
 しかし父親は反対した。
 モデルといっても肌の露出を強いられることもあるだろうと、我が娘が体を売り物にする金儲けに利用されるのが許せないらしい。
 ステレオタイプなイメージの「外国人の父親」なら、娘がチャレンジしたいことを大らかに支援してくれるものなのに、真璃沙の父はまさに融通の利かない日本の親という感じで、言っていることが時代遅れ甚だしかった。
 最終的には「そんなことやってないで勉強しろ」と議論をシャットアウト。思春期に入った辺りから父親を煙たく思っていたので、以来、この件については母親にしか相談せず、結局真璃沙は父親の承諾を得ないままに高校卒業まで毎号掲載され続けた。


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