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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第一章 脅迫されたOL-6

 保彦はパスケースの定期区間がまさにマップ上に表示されている最寄駅であることを確認すると、灰皿へタバコを投げ入れ、JRを通りすぎて再び日比谷線の乗り口のほうへと向かった。
 ――この駅に着く前に草加を過ぎたから、ここはもう埼玉だ。普通電車しか停まらない駅前からは個人商店が立ち並ぶ細道が伸びていた。マップアプリの表示を頼りに歩みを進めていく。商店街のようだがシャッターが閉まっている店が多く、平日の午前中、通勤通学の時間帯も終わったとなれば人通りは少なかった。
 地図を見ると更に細い道が入り組んで交差していた。見当をつけて折れると、古い戸建てが並ぶ閑散とした風景に変わっていった。
 ここまできて一つの不安を覚えた。
 この男に同居人が居ないとは限らない。歳から考えて結婚している可能性もあるし、子供だっているかもしれない。独身でも、親兄弟と同居ということもありえる。
 全て保彦にとっては知らない人々だ。彼らの前でどう振る舞えばいいのだろう。
 実は僕は哲郎さんではなく、武藤保彦と言う者です。土橋が心を患っていると家族が知っているならば、事態をややこしくしかねない。
 しかし目的地に到着して安堵した。目的地は三階建ての古いマンションなのかアパートなのか、どっちで呼べば良いのか分からない建物だった。入口には、何とかハイツ、と書かれていたのだろうが、その肝心の何とかの部分が剥がれ落ちていて、ハイツすらも表示が危しくなっている。
 外観から察するに、明らかに家族で住むような物件ではない。錆びた外階段を登り、廊下で部屋番号を確認していくと、三〇八号室は最奥の角部屋だった。隣に立つ工場だか倉庫だかのトタン壁がすぐ側まで迫っていて薄暗い。ポケットから取り出した鍵を差し込むと、軽く捻っただけでカシャンと音を立てて開いた。
 鉄扉を開き、玄関先の電灯スイッチを押した。電球が弱っているのか、廊下の灯りは仄暗かった。細く短い廊下の向こうには一間しか見えない。一人暮らしが確信できた。
 しかし汚い。短い廊下にはコンビニのビニール袋や、タオルが落ちている。右手のドアは風呂場だろう。左手にはキッチンがあるが、コンロやシンクにもゴミや洗濯物が置かれ、隅には埃や髪、加えて髪ではないだろう縮れた毛まで吹き溜まっている。
 ドアを閉め、鍵をかけようとしてやめた。土橋が入ってくるかもしれないからだ。
 扉塞すると空気が淀んで、すえたニオイが強くなった。我慢して保彦は靴を脱いで中に入った。スリッパ無しで床を踏みしめるのは抵抗があったが、どうせこの足の裏は自分のものではない、と自らを説得して歩を進めた。
 陽は高いのに薄暗いから電灯を灯ける。六畳のフローリングらしいのだが、廊下以上に部屋の中は荒れていた。真ん中に鎮座した薄汚れたマットレスの周囲に様々な物が散乱している。
(カンベンしてくれよ……)
 保彦は毛羽立ったカーテンを開いて、窓を開けようとしたが鍵が硬く回らなかった。力を込めて何とか外し、やはり乾いた何かが凝固してレールを妨げているからうまく開かない窓を何とか二十センチほど開いた。このニオイを外に逃さなければ、土橋の来訪を待つことなどできなかった。
 部屋を振り返って改めて確認すると、どう見たってこの男の生活スペースはマットレスの上しかないと物語っていた。汗が染み込み、垢がこびりついているに違いない。シーツの上は夥しい体毛に塗れている。
(どうせ俺の体じゃない)
 もう一度同じ理由でマットの上に座った。そして程なくして朝異変に気づいてからここまでやってきた疲れをどっと感じた。姿勢を維持できずにそのままマットレスの上に仰向けに寝転がる。古びた吊り下げ式の電灯と、黒いカビが斑に染みた天井を眺めた。ここで待っていれば、いつか土橋がやってくるはずだ。もうすぐ正午、土橋が自宅へ帰ってくるまでに、あとどれくらいかかるだろうか……。
 はっと目覚めると、随分時間が経ってしまっていると直感した。スーツのポケットから携帯を取り出すと、夕方の六時を回ってしまっていた。睡眠を誘ったのが土橋の肉体的な疲れなのか、保彦の精神的な疲れなのか分からなかったが、うたた寝どころではなく、かなりの時間眠ってしまった。
 身を起こすと下半身に鬱屈を感じた。野暮ったいスーツの前が尖り、少し身を蠢かせただけで下着と硬く張った先端の間にヌチュリとした湿感があった。
 愛梨の夢を見た。夢の中の愛しい恋人は、仰向けになった保彦の脚の間に蹲ると、恥じらいながら男茎を握った拳を緩やかに上下させて先端にキスをしていた。保彦の口や頬にキスをする時と同じく、淫猥な形に漲った亀頭を相手に清純な唇を触れている。
 視線を感じたのだろう、ふと目線を上げて、じっと見ていた保彦と目が合い、途端に紅潮して「そんなに見ないでってばぁ……」と、唇を水鳥の嘴のように尖らせて照れた笑みを浮かべた。愛梨のような女の子が男を口で愛するなど、普段彼女と接している知人たちは信じられないだろう。フェラチオを愛梨に仕込み、奉仕を独占している優越感は、いつも男茎への触感以上の快楽を保彦にもたらしてくれた。


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