第一章 脅迫されたOL-14
いったい土橋もどういう美意識で選ぶのか気が知れない、股上の深い白ブリーフには、ズボン以上の濡れ染みが広がっていた。薄っすらと黄ばんだ白布の突起から、透明の雫がプックリと玉を作っている。
それだけで言葉を失っている汐里をおいて、ブリーフの中から男茎を取り出した。
すぐに汐里は目を逸らした。だか瞬間に土橋の男茎の姿が頭に焼き付いたのだろう、体を波打たせて咽せていた。
男茎はワイシャツの裾を捲りあげて真上を向くまで屹立した。
保彦自身、土橋の男茎は異形だと思った。何と言っても亀頭の大きさ。幹は特別に太いわけではないが、首回りに広げた傘の縁は深く、円周がかなり大きい。よく茸類に喩えられる男性器だが、土橋のそれは、主と同様の醜い姿に相俟って、まさしく傘の広げた毒キノコを思わせた。怒張が浮き出していっぱいまで張りつめた男茎は、その亀頭の重みのせいか、血潮の脈動のたびにビクンッと跳ねては、余勢でユラユラと揺れている。
そして汐里を慄然とさせたのは、その異様な姿だけではなかっただろう。
亀頭の裏側に集束していく皮膚には厚みがあり、首回りにびっしりと滓がこびりついていた。それがスーツもブリーフもドロドロにしていた粘液によって溶かされ粘体となっている。いくら顔を背けても、放たれる臭気は鼻先へ漂っているだろう。
こんな醜悪な男で、なおかつ包茎。
保彦も鼻を塞ぎたかった。この臭いはひどい。
一人待っている間に尿意を覚えて入ったトイレで、土橋の男茎の姿をを知った。掃除などしていないだろう便器の臭気と、己の下半身から蒸せ上がってくるニオイが混ざり、胃液がこみ上げた。
入れ替わった相手は醜男の上にひどい包茎。発狂しそうになりながら黄色い泡唾を便器にいくつも吐瀉した。
だが今の保彦にとっては、土橋の男茎はこの獲物を狩るための最高の武器となっていた。
災い転じて福となす? そんな都合のいい諺を思い浮かべながら、
「ほぉら、広瀬さん、こっち向いてごらん?」
そう言っても汐里はベッドの上に座ったまま顔を背けていた。無理もないな、と保彦も納得し、
「オマンコ、舐めさせてくれないなら、逆に広瀬さんに舐めてもらわなきゃね」
そう告げて蟻の門渡りに力を込め、目の前で亀頭を大きく揺らしてやる。汐里は力なく首を振って、
「ム、ムリ……、そ、そんなの、ぜったい……」
今日初めて強がりを隠さず、怯えた表情を浮かべる。
いい顔だ。だが、クンニリングスを頑なに拒んだ代償だ。
保彦は残虐な笑みを浮かべて、一歩マットレスを進むと、ヒップだけで後ずさりしようとする汐里をやすやすと捕まえた。脳天の髪を掴み、強引に上を向かせる。マスカラに飾られた睫毛は涙を含んでいた。
「お、おね、おねがい。やめて、ムリ……、や、やっぱりして、いいから……」
懇願する汐里を冷淡に見下ろすと、
「していい? なにを?」
顔を背けたいのだろうが、髪を掴む手に力を込めて許さない。見上げている目の前で、白粘が蔓延る男茎を揺らしてやる。
「だ、だから、その……。わ、私のア、アソコ舐めたいんでしょ……?」
哀願のやり方もよく分かっていない。舐めたいんでしょ? 何を「舐めさせてあげる」体で言ってやがんだ?
保彦は更に半歩進んだ。顔の前で屹立した男茎の根元を握る。ヌチャリとした感触が自分でも不快だったが、
「だったら最初っから素直にさせればいいんだよ、広瀬さんっ!」
そう言い放つと、大きな亀頭を汐里の顔めがけて振り下ろした。
「うわあぁっ!!」
今日一番の悲鳴が部屋に響いた。肉塊で打たれるや汐里は脊髄反射で上躯を暴れさせようとしたが、保彦は髪を離さなかった。
そこへ二発目を打ち下ろす。大きな亀頭が額に当たると、ビチッ――いや違う、ビチャッと音が立った。。汐里の顔を打った瞬間感じたインパクトは湿感を確かに含んでいた。鼻筋に付着した粘液はから立ち上る臭い。鼻の塞ぎたいだろうが、後ろに回した手はビクともするまい。
三度目の打擲。
「あぐっ! やめっ、やめ……、ん……? ……や、……ううっ!」
保彦も、男茎が離れる時、一度目とも二度目とも違う感触があった。
眉間近くを亀頭で打撃すると、幹が離れる時――、目の下と亀頭の間に粘体が伸びてプッツリと切れた。顔に触れた感覚が前回、前々回と異なることが汐里にも分かったのだろう、薄目を開いた時、引いていた糸が切れた瞬間を見てしまったのだ。