初めての・・・豹介とゆかりの場合-25
葵の父がその問題を解決してくれたんだよ。
―――なんて奈々子は言えなかった。
「・・・そう。でもこれからは、何かあったら愚痴でもいいから俺に言って欲しいよ。
俺は奈々の彼氏なんだから、奈々がつらい時は一緒にいてあげたい。」
「ありがとう・・・心配してくれて。わかったよ。これからは葵にも相談するね。
本当は聞いて欲しかったんだけど、勉強の邪魔したくなかったから・・・。」
「勉強と奈々は別だよ。俺は、奈々との時間も大事だから。」
そう言って、葵の顔が不意に奈々子に近づいてきた。
「あっ・・・葵?!ここでキスするの?!」
小声で奈々子は焦るように言う。
「ダメ?奈々に会えた時は触れたい。」
「それは・・・私もそうだけど。だって、なんか通りかかってる色んな人見てるよ。」
慌てる奈々子に構わずに葵は彼女の唇を奪った。
「今度はゆっくりしようね?」
にっこりと屈託のない笑顔を奈々子に向けながら、葵はジュースを飲み始めた。
奈々子はいまだに葵に翻弄されてしまう。
熱く火照った頬に両手を当てながら、やられたという目で葵を見つめた。
葵の思惑通り、この光景も他の塾の生徒に見られていて、
葵が近くのカフェで年上の女とキスをしていたとすぐに噂が流れた。
美少女と熟女、どちらが本命なんだろう・・・
などと失礼な話題でしばらくこの塾の生徒たちは盛り上がっていた。