初めての・・・豹介とゆかりの場合-14
自宅に着き、豹介は少し震えた手で鍵を開ける。
今日は両親二人とも、それぞれの会社の歓迎会があるとかで、
夜遅くなると言っていた。
彼の中学生の妹は春の研修旅行中だ。
今、この家には彼ら以外誰もいない。
ひっそりと静まり返っている家にゆかりと二人きりだ。
ゆかりも少し緊張した面持ちで豹介の家へと上がる。
「・・・何か飲むか?」
「うん・・。じゃあ、お水ちょうだい。」
「先の俺の部屋に行ってて。持ってくから。」
ゆかりは階段を上がり、何度も来たことのある豹介の部屋へ入った。
なんだか今日はこの部屋も特別な空間に思える。
ゆかりは豹介のベッドに腰を下ろした。
心臓がドキドキいってる。
私、豹介とするんだ・・・。そう思うとやっと結ばれると言う想いと、
私が上手にできるんだろうか・・
それに、やっぱり決心したと言ってもちょっと怖いという気持ちが交差する。
そう考えているうちに豹介が部屋にやって来た。
無言でペットボトルに入った水をゆかりに渡す。
「・・・ありがと。」
ゆかりもどんな表情をしていいのかわからず、戸惑いながら手を伸ばすと、
豹介の手が偶然触れた。
二人はびっくりして同時に手を引っ込めると、ペットボトルが床に落ちてしまった。