第23章 ただ孕むために-1
第23章 ただ孕むために(1)
ロバとの激しい交尾の後、二日くらいで百合絵も生理になった。捕らえられたオンナたちには生理時の手当など許されなかった。垂れ流しにさせておくのが普通だった。ところでこの百合絵には子宮が二つあったのだ。それをバイヤーの夫婦に見せるためにサキは百合絵を呼びつけた。婦人科の診察台を取り囲むように男たちが椅子に腰掛けていた。
「さっさと台の上にのるんだよ」
回りの男たちの視線を感じながら百合絵は診察台に近寄った。男たちの視線がどこに注がれているか百合絵にはよくわかっていた。レミによって秘裂の両側だけがきれいに脱毛された部分に男たちの熱い視線を感じていた。脱毛されているために秘裂の周辺は乳首を飾る乳輪ほどではないものの大陰唇をはじめとして秘裂を縁取るように茶色に色素が沈着していた。しかも今日は最悪の状態、生理だった。両腿に伝わって垂れている生理血が惨めだった。
その生理血で股間を汚した百合絵が診察台にのせられた。台に乗るためには股間を大きく開かねばならなかった。開いた小陰唇の間から垂れてくる血を手の平ですくうように押さえながら、男たちの視線を避けるように台にあがった。
「足をのせるのよ」
「えっ」
台の上で百合絵は両足を閉じて両手で股間を押さえていたが、すかさずサキが命じた。両手はレミによって頭上でまとめて括られてしまった。あとは両足を足台にのせるだけだった。両足をのせる足台は最初から大きく開かれていた。普通は両足が乗せられたあと、ゆっくりと開かれるのもだが自分で開いてのせろというのだ。しかも生理時なのに。
百合絵は覚悟を決めて両足を開いて足台に乗せようとした。
「ほら、もっと大胆に開かないと届かないよ」
予想以上に足台は離れていたのだ。両腿の筋肉がつりそうになるのを心配しながら百合絵は両足を足台に置いた。レミがすかさずベルトで足首を留めた。パックリ大きく開かれた股間の中心に男の視線が集まっていた。
小陰唇のわずかにくつろいでいた。その中央より少し下には、ほんの数日前にロバが出入りしたところがあり黒く大きな洞窟となっていて、今はどす黒い生理血をたたえていた。サキは男の視線を遮るかのように百合絵の股間の前に立った。
百合絵には子宮口が二つあるので、どちらの子宮から出血しているのかをまず調べる必要があった。
「ああ、冷たい」
大きな膣口にクスコという婦人科用に用いる開口器をスブッと埋めて中を覗いた。ドーナツ状の子宮口が二つ見え、その片方が充血して中央から出血していた。バイヤー夫婦も立ち上がり、ひとりずつライトを使って確認した。今回の出血は右の子宮からであった。
「子宮に触ることができますが、触ってみたい方はおられますか」
通訳を兼ねたサキがバイヤーたちに向かって話した。オオオッという声が上がり、急にざわつき始めた。サキに是非ともと返事したのだ。
百合絵の生理の周期は二十八日であった。卵巣は、それぞれの子宮に一つずつ付いていて、毎月の出血は左右交代で起こるようだった。
バイヤーたちには手袋の着用を勧めたのにもかかわらず、素手でさわるというのだった。
「いたたた、ああ、痛い」
男の毛深い手が膣からでていた。手首はすっぽりと隠れていた。中で蠢いているのだろうが、何をしているのかは百合絵の口から漏れる言葉から判断するしかなかった。かなり強引なことをしているのかもしれない。真っ赤に汚れた手首を濡れたタオルで拭いながら順番を待つ男に両手で感動を伝えているような仕草が見られた。さすがにバイヤー夫人たちは膣への挿入は見送っていた。
あとで聞くと子宮口に指を入れた男もいたようだった。
百合絵の妊娠の計画は、体外人工受精卵を使って、二週間後に左の子宮に受胎させ、一月遅れで右の子宮に受胎させることとされていた。
受精卵は裕美の卵が凍結されて保存されていたので、それを使うこととした。
「おまえの子宮に受精卵を入れてあげるわ。もちろん他人の。……父親も母親も誰かわからないけれどね。……おまえの卵子は年齢からいって不具合なのと、取り出しても上手く受精するかどうかめんどうだからね。どうせ孕むのなら誰の子を孕もうと同じでしょ」
「そんなことしないで下さい。他の子どもを妊娠するのはいや。どうせするのなら自分の子どもがほしいわ」
「それは止めた方がいいわ。だって産んだからといってあなたが育てるわけじゃないのよ。……それに……産まれた子どもは、おまえが顔を見る前にゴミ箱に捨てられたり、他人の手に渡っていくんだから。……それのほうが残酷でしょ。……それにおまえは生きている限り妊娠しつづけるのよ。死ぬまでね」
「そんな……かわいそう……でも,自分の子供なら……」
「あきらめの悪い女ね。どうしても自分の子どもが欲しいというのなら、いっそのこと自分の子どもが産めないようにしてしまうわよ。卵巣を壊してしまえばお終いなんだから」
「そんなこと……できるわけないわ」
「それが簡単にできるのよね。ついでにやってあげましょうか」
「嫌よぉ。そんなの嫌よぉ……やめてぇ」
叫きだした百合絵を残して、マヤは出ていった。百合絵の下半身には、言葉の通じない男の腕がおさまっていた。そしてまだ順番を待つ男がいた。
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