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悪夢
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悪夢〜抵抗〜-1

また同じ夢を見た。
黒ずくめの男達に追われ、逃げるだけの夢。
圧迫感。
憤り。
恐怖。
それしか感じられない。
対抗できないのか?
目が覚めると不快な頭痛とともに汗ばんだカラダに吐き気がとまらない。
寝ることの恐怖。
そこから逃れたい。
夢も現実も逃げてばかりだ。
知人の精神科を尋ねた。
「それは夢憑きという症状です。
助かる為には夢の中の世界で、例の黒ずくめの集団から逃げてはいけない。
立ち向かわなければ。
まずは夢の最中で“認識者”としての自覚を持たなくてはならない。
これは夢である。
夢の世界は自分の認識の有無が唯一の武器になり、
世界を支配するか否かは
あなた自身の認識に懸かっています。
その為には………」

噛み砕いて言うと
認識者として、
夢の世界にいることを自分自身で気付き、
世界そのものを支配すればいいと言う。
そもそも夢は自分の深層世界が創りだした虚構なのだから。
問題点が一つだけある。
相手に自分が認識者であると気付かれてはいけない。
夢憑きの中の魔物に意識ごと飲み込まれてしまうから。
気付かれるような言動を慎み対抗する。
それが夢憑きから唯一助かる手段だという。
夢だと自覚する為には、寝る前に準備をしなくてはいけない。
人は眠っていても視覚、聴覚は若干作動している。
「これは夢の世界だ。
おれは支配できる。
だって夢だから。」
とレコーダーに吹き込み、イヤフォンでリピートさせる。
そうする事により、認識者となれるそうだ。
さっそく旧式のレコーダーに声を吹き込み、
イヤフォンを耳に当てて
眠りにつく支度をした。
なかなか眠りにつけない。
極度の昂揚が刺激になり、眠りを妨げていた。
仕方がないので、医者から処方された睡眠薬を飲みこみ目を閉じた。
脱力感に襲われ、不明瞭な深層世界に墜ちていった。
いつもの景色。
取り囲まれている。
本能が、逃げろと叫ぶ。
とっさに窓を開け飛び降りようとした瞬間。
「こ…は……夢…だ………」
声が聞こえた。
声はだんだん鮮明になってこれは夢だと告げる。
意識が鮮明になっていく。
金縛りから解き放たれたように、
弓から放たれた矢のように。
認識者として覚醒していく。
念じる。
武器をくれと。

手に冷たい感触が宿る。
見ると拳銃を握り締めていた。
そっと窓から降り、銃口を黒ずくめの男に向けた。
冷静に数を数えた。
1、2、3、4……
12人の黒ずくめの男達がいる。
狙いを定め射ち抜く。
バタっと鈍い音をたてて倒れていった。
ズドン……ズドン。
次から次へと仕留めていく。
11人が地面に倒れ落ちた。
あと1人を探す。
どこにもいなかった。


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