葵の父親-38
休憩時間が終わり、奈々子は重い足を引きずってナースステーションへ着くと、
女性職員たちは手のひらを返すように奈々子に寄ってきた。
特に婦長が一番それがわかりやすかった。
「皆川さん、ちゃんとお昼食べたの?さっき食堂で全然食べてなかったって
聞いたわよ〜。あなた細いんだから、もっと食べなきゃダメよ。」
「――はい・・・。」
「今度みんなでおいしいもの食べに行きましょうね。
あ、これから午後の回診の準備してくれる?」
婦長は機嫌が良さそうに笑顔で奈々子に話かけた。
(婦長ってもしかして小田先生のこと好きなのかな?
だから私が先生に呼び出されたのを見て、面白くなかったのかな・・・?)
この日以降、奈々子が職場でいじめられることは無くなった。
しかしそれよりも奈々子は、
葵の父親が一体どういう人なのか気になるようになった。
葵が嘘をつくわけはない。
まさか葵の父親は二重人格なのだろうか?
どちらにしろ、一人の人間として、小田晃という存在を知りたいと思った。