葵の父親-30
時間は必ず過ぎるもので、奈々子の休憩時間になってしまった。
先休憩の婦長が戻ってきて、もう一人の夜勤職員に尋ねる。
「太田さん、何か特変はなかった?」
「いえ、ありません。朝の配薬の準備もやっておきました。」
「そう、ありがとう。じゃあ、皆川さんと休憩行ってきて。」
奈々子は婦長にぺこりと頭を下げて、もう一人の職員と休憩室に向かおうとすると、
彼女だけ婦長に呼び止められる。
「あ!太田さん、ちょっと待って!」
「はい?皆川さん、先休憩してて!」
そう言われて、奈々子は一人で休憩室へ向かった。
(小田先生の所へ行かなくちゃ・・・。
今なら太田さんに何も言わずに先生の所に行けるから、このまま向かっちゃおう。)
そう考えて、奈々子は小田医師の部屋へと急ぎ足で向かった。