葵の父親-25
奈々子がチラッと紙袋の中を覗くと、
一目見て知らない女の子たちからのプレゼントだとわかった。
手紙が入っていたり、『小田先輩へ』とか『葵くんへ』とか
可愛らしく書かれた文字が目に入ったからだ。
「明日土曜日だから・・・学校に置いて盗まれたら返せないから。」
「え?これみんな返すの?」
「勝手にロッカーの中に入っていただけだし、
知らない人からもらったのは本人に返すつもり。
友達からもらったのは受け取るし。家でちゃんと分けなきゃと思って。」
「でも・・・みんな葵にもらって欲しいと思って用意したんじゃない・・・?」
「知らない人からもらったのは嬉しくない。」
「そうなの?私は知らない人からプレゼントもらったことないから
わからないけど・・・。私だったらラッキーってもらっちゃうかも。」
「そういうのが危ないんだよ!ストーカーからかもしれないじゃん。
奈々も気を付けてよ。知らない人から物はもらわないで!」
「うん、わかった。・・・ってなんか私そんなに危なっかしい?」
「たまに奈々は子どもみたいだよ。そこもカワイイ。」
10歳年下の男に子どもみたいなんて言われて、本当は怒るべきなのだろうが、
可愛いと言われてついつい奈々子の顔がにやけてしまう。
その隙に葵は奈々子のおでこにキスをした。
不意打ちでこんなことをされて、頬が赤くなってしまう。
彼に未だにドキドキしてしまう。
「ほら、そうやってすぐ赤くなるところも好きだよ。」
葵はそう言ってテーブルに用意された奈々子が作った料理に目を向けた。
「ご馳走作ってくれたんだ。」
「そんな、ご馳走だなんて・・・。葵の方が料理上手だから恥ずかしいけど、
ちょっと頑張ってみた。着替え終わったら食べよう?」
「わかった、すぐ着替えてくるから待ってて!」
葵は急いで自分の部屋へと向かった。