葵の父親-23
「小田先生?!」
「皆川さん?!」
奈々子は焦る。どうして先生がここに・・・?
うろたえる奈々子に小田医師は苦笑いをしながら言った。
「君が葵の彼女だったんだね。」
その言葉に奈々子も状況を理解した。
「先生が葵君のお父さんなんですか・・・?」
葵の父は気まずそうに微笑んだ。
「今日は葵の誕生日だから一緒に食事でもしようかと思って、
仕事切り上げてきたんだけど、お邪魔だったようだね。」
「あっ・・・すみません・・・。葵君から今日先生が帰ってくること聞いてなくて、
勝手におうちに上がり込んじゃって・・・あの・・・」
「いや、いいんだ。僕も葵には何も言ってなかったから。
じゃあ、僕は仕事に戻ることにしようかな。
皆川さんが祝ってくれた方が葵も喜ぶから。」
「あの、よかったら一緒にご飯食べませんか?沢山作ったので・・・
たいしたものではないんですけど・・・。」
「ありがとう、そうしたいのも山々だけど仕事が残っているから。
じゃあ、ゆっくりしていって。」
そう言って、小田医師は去って行ってしまった。
しかしその背中はどこか淋しそうだった。
引き止めたい気持ちもあるが、葵が父親を嫌っていると聞かされている奈々子には
どうすることも出来なかった。