葵の父親-22
葵の誕生日当日、奈々子は運よく早番だったので仕事後、
心置きなく準備に取り掛かれた。
次の日は休みを取っているし、ゆっくりと葵と一緒にいられることが嬉しかった。
彼がお酒飲めたら、お洒落でちょっとお高いレストランでも行ってお祝いできたけど、
それももうちょっと我慢。
スーパーで葵の好きな料理を作るために材料を買って、
借りた合鍵を握りしめて家へと向かった。
家政婦は今日来ないのか、キッチンには葵が朝食べたであろう食器が
無造作に置いてあった。彼の父親が帰ってきた気配はない。
自由に使ってと言われていたので、どこに何があるのか扉を開けると、
どこも綺麗に整頓されていた。
これは家政婦がやっているのか葵が片づけているのか謎だった。
料理の準備も無事に終わり、後は葵が帰って来るのを待つだけだった。
放課後はゆかりたち友達がお祝いをしてくれるらしいから、帰って来るのは19時頃かな?
そんな事を思いながらソファーでくつろいでいると、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。
葵だ!思ったより早く帰って来たんだなと思いながら、早足で玄関に向かう。
「お帰りなさい!!」
笑顔で奈々子は葵を出迎えたと思ったら、そこに立っていたのは葵ではなく、
背の高い中年の男が驚いたように奈々子を凝視していた。
奈々子も突然知らない男の訪問に言葉が出なかった。
しかし、・・・どこかで見覚えのある顔、誰だっけ?と思う。
すぐに答えは見つかり、同時にお互いに名前を呼んだ。