葵の父親-20
豹介とゆかりにも自分の過去を告白してからも、彼らは変わらずに葵に接していた。
大人びていると思っていた葵にも、苦悩や悩みがあると知って、
自分たちと変わりないんだと思ったようだ。
豹介たちにいじられて、葵は珍しくちょっと意地悪な事を言う。
「ゆかりだってこの間、1年の男子に声かけられてなかった?」
「えっ?!」
豹介は驚いた顔でゆかりに振り向いた。ゆかりはジロっと葵を睨んで豹介に弁解する。
「理科準備室の場所教えてって聞かれただけだよ。」
美少女の彼氏という、気が抜けない立場の豹介は少し心配性だ。
彼女を女として狙う奴は許せない。
「なんか紙切れもらってなかった?」
葵の口撃は終わってない。
「葵、見てたの?!助けてくれたって良かったのに!!意地悪!」
「何だよ、紙切れって?連絡先受け取ったのか?」
「受け取ってないよ!彼氏いるからって返したんだから、心配しないでよ。」
「・・・そう、ならいいけどさ。」
ホッとしている豹介をゆかりは見つめていると、葵が言った。
「モテる女はツラいな〜。」
「おい、コラ葵!ゆかりが困ってたんなら、助けてやれよ!」
「助けてやりたいのは山々だけど、あそこで俺が行ってたら誤解されてたから。」
「何が?」
「・・・俺がゆかりと付き合ってるって誤解。実際されて豹介落ち込んでただろ?」
「・・・あぁ、そうだった。」
豹介がそう言うと、ゆかりは初耳だったように驚いた。
「え?何?!私と葵付き合ってるなんて話あったの?」