葵の父親-13
4月になり、いよいよ奈々子は内科病棟での仕事が始まった。
彼女は内科の第一ナースステーションに配属になった。
同期の東海林が運よく(?)移動にならず、
奈々子はしばらく彼と組んで仕事を教わりながら慣れていく事になった。
東海林なら気心も知れているし、内心奈々子はホッとした。
これで意地悪な先輩にでも当たったら、益々気が滅入ってしまう。
「それじゃあ東海林君、皆川さんの指導よろしくね。」
婦長は笑顔で東海林の肩をポンと叩いて、ナースステーションを後にした。
奈々子にとっての新しい婦長は、小柄で可愛らしい女性だった。
以前の婦長は自分にも他人にも厳しい人で、サバサバした性格だったのに対し、
彼女は優しくて穏やかそうな感じに見え、奈々子は少し拍子抜けした。
「あの婦長、評判良いんだ。良かったな皆川!」
「そうだね、優しそうで良かった。」
「そんじゃあ、先生たちにも挨拶してくるか!
今回内科に移動になったナースは皆川だけだし、珍しく新人もいないから、
まぁゆっくり覚えていけばいいさ。
小児科とやることはたいして変わんないと思うから。」
「はい、よろしくお願いします。先輩!」
奈々子がそう言うと、東海林は照れくさそうに笑った。
「同期だけど、ここじゃ俺は先輩かぁ〜!」
そう言いながら奈々子と東海林はナースステーションを出て、
医師の人たちに挨拶をして回った。