JK(後編)-6
「だって、先生に嫌われたくなかったんだもん……」
「嫌いになったりするもんか」
「うん……」
「でも、好きだなんて言わないからな」
「うん、それでもいい……」
彼女の髪をやさしく撫でてやると、桃の果実のような甘い匂いがほんのりと漂ってくる。
学校にいれば嫌というほど嗅がされる、女子高生たちのフェロモンの匂い。
だがこの子は、奄美梨花の匂いには麻酔効果がふくまれているようだ。
体中のあらゆる部分から分泌される女の子の匂いに惑わされる。
僕はそれを胸いっぱいに吸い込み、もう一度彼女の唇を盗んでむさぼった。
そのままソファーに押し倒し、またキスをして、それから僕らはベッドの中で一つになった。
性交渉は初めてなのだと奄美梨花は恥ずかしそうに告白した。
けれどもお互いの深いところで繋がれているうちに、彼女の表情の一つ一つに恍惚が浮かぶようになり、途中からはかなり積極的に求めてきた。
二人とも全裸だった。
相手は未成年だから避妊をしなければならない。
しかし僕は避妊具を用意していなかった。
それとなく膣外に射精しようと思っていたけれど、そのまま来て欲しいと彼女に懇願された。
「先生……、好き……、大好き……」
あえぎ声のような彼女の言葉を聞き、僕は理性を投げ捨てた。
頭の中は真っ白だった。
罪悪感すら蜜の味がする。
しかし奄美梨花の中にすべてを吐き出した途端、取り返しのつかないことをしてしまったと思った。
そんな僕の腕枕の中で彼女はとても幸せそうに微笑んでいた。
初体験の余韻を噛み締めているのかもしれない。
僕はといえば、レモネードみたいな彼女の肌の味を、舌の記憶を頼りに思い出していた。
そこで僕のお腹がグウっと鳴る。
そういえばお昼ご飯をまだ食べていなかった。
我慢できなかったのか、となりでは彼女がくすくす笑っている。
教師を笑うとは何事だ、とふざけながら窓をちらりと見た。
雪は相変わらず降りつづき、そこで僕はある重要なことに気づく。
「奄美、自転車はどうした?」
すると彼女は小さな悲鳴を上げた。
「あー、やばーい!」
どうやら彼女の大事な自転車は、この大雪の中に置き去りにされ、持ち主の帰りをじっと待ちつづけているようだ。
しかし彼女は言った。
「先生に責任を取ってもらうからね」
この言葉の真意が果たしてどこにあるのか、致命的なほどに鈍感な僕などが知る由もない。
ただし、これだけはわかる。
今年のクリスマスイヴは奄美梨花と過ごすことになりそうだ、と。