追憶のアネモネ〜捨てられない女〜-6
先輩がどうしてそこまで神経質になるのかがいまいちわからない。
他にこんなのもありますよ、と奈央は酔いのまわった赤ら顔で、思いつくままに指折り紹介する。
「茄子でしょう、それからバナナでしょう、人参、アスパラ……」
「もう、呆れて何も言いたくないわ」
「あっ、ズッキーニなんてどうですか?」
「あたしを勧誘しないで欲しいんだけど」
「どうせなら地産地消にしたほうがいいですよね」
「ねえ、人の話聞いてる?」
後輩の門出を祝うためにご飯を奢ると言ってしまったことを後悔する晴美だった。
「ゴーヤーを使った後は、ゴーヤーチャンプルーにするとか」
「まだ言うか」
そんな美女二人による筒抜けの会話をどこからか嗅ぎつけたのだろう、若い男性客が入れ替わり立ち替わりでちょっかいをかけに来た。
しかしここは飲み屋であって、風俗店ではない。
奈央と晴美の連携プレーにより、下心丸出しの男性たちはことごとくノックアウトされていった。
「こうなったら、朝まで飲んじゃうぞー!」
「おー!」
「かんぱーい!」
シメのお茶漬けとアイスクリームを食べたことなどすっかり忘れ、二人はまたお洒落なカクテルを注文して高らかに乾杯した。
そして口を開けば、エッチな打ち明け話に花が咲く。
こぢんまりとした女子会になる予定だった極秘のサミットは、日付を跨いでも熱が冷めることはなかった。