凌辱姫-2
背は低く、ベラの半分ほどしかありません。
「こんばんは。じつは私、ペガサスにあげる木の実を探しているの」
「そりゃあよかった。うちには世界中のめずらしい木の実がそろっているからね」
「それに、果物もあるわ」
そう言ってベラが赤い果実に手を伸ばすのを見て、ピクシーは忠告します。
「そいつはやめておいたほうがいい」
「あら、どうして?」
「一度食べたらやめられなくなる、禁断の果実だからさ」
けれどもベラは怖がるどころか、どうしても食べてみたいという欲求に駆られます。
どんなに甘い味がするのか、想像しただけで胸がおどるのです。
そこでピクシーは言いました。
「君、お城のお姫様だろう?」
白いローブで変装してきたベラは動揺しましたが、すぐに佇まいを正しました。
「ええ、そうよ」
「やっぱりそうか。だったら魔法が使えるんだろう?」
「使えるわ。だけど、ちっともうまくいかないの」
ベラはまだ魔法使いとしては未熟でした。
はやく一人前の魔法使いになりたいという気持ちばかりが先走って、能力のほうがなかなか追いついてこないのです。
そのことを告白すると、途端にピクシーはひらめく顔になり、禁断の果実を売ってもいいと言い出しました。
ただし、条件があるというのです。
「君の体の一部と交換だ」
「私の体の一部?」
ベラは眉をひそめて悩みました。
体の一部と言われても、どうしたら良いのかわかりません。
そこでピクシーは、こうも言いました。
禁断の果実を口にした者には、偉大な魔力が授けられるのだ、と。
「わかったわ。それならこれでどうかしら」
覚悟を決めたベラは、やわらかな物腰で両手を差し出します。
そこにはブロンドの髪の毛が一本だけ乗っていました。
「いいだろう」
ピクシーはその髪の毛を布袋(ぬのぶくろ)にしまうと、ベラの手に赤い果実を一つ持たせました。
こうして無事に目的を果たせたベラ王女は、城に戻るなり自分の部屋にこもり、うっとりとした眼差しで赤い果実を眺めていました。
林檎のようだけれど匂いがまるで違います。
ベラはごくりと生唾を飲み込み、その魅惑の果実にやさしく歯を立てるのでした。
「はぐ……」
あごを動かした瞬間、ベラは取り憑かれました。
鼻を通り抜ける香りはどこまでも芳醇(ほうじゅん)で、豊かな果汁が舌にまとわりついて離れません。
「ああ、おいしい……」
幼い唇が二口目をむさぼります。