我ら純情中学二年生-4
「驚くのはまだ早いぜ」
「なになに?」
「女ってさ、興奮するとあそこが濡れるらしいんだ」
「もしかして、エロい気分になるってこと?」
「その通り。そんでもって、ぬるぬるした液を出すってわけさ」
「あ、わかった、それもホルモンなんだね?」
「正解」
なわけないだろ、と言いたいのを豊は必死にこらえた。
「俺、ホルモンのこと見直したかも」
達矢のこの発言にはさすがに吹き出しそうになった。
可笑しくて涙がちょちょぎれそうだ。
それにつけても猥談とはつくづく楽しいものだなと豊は思った。
男同士でこれだけ盛り上がるのだから、女同士ならなおのことだろう。
そう考えると無性に女子たちとしゃべりたくなってきた。
いいなあ、俺にも高校生の姉ちゃんが欲しいなあ──などと豊がいじけていた時だった。
家に誰かが来たみたいだと達矢が言うので、豊は耳の穴をほじった。
階下で人の話し声がする。
やがてとなりの部屋のドアが開き、階段を下りていく足音が聞こえた。
「たぶん、姉ちゃんの友達だよ」
達矢が言った。
「それって、女友達ってこと?」
「だと思うよ」
「高校生の?」
「だろうね」
「ど、ど、ど、どうしよう」
「豊はどうもしなくていいよ」
テンパってしまった親友に向かって冷静に突っ込む達矢。
すると階段を上がってくる数人分の足音が近づいてきた。
少なくとも四、五人はいるのではなかろうか。
理乃の声に混じって、彼女とおなじ種類の姦(かしま)しい声が聞こえる。
にぎやか過ぎて、「おじゃまします」という部分以外はほとんど聞き取れないが。
間もなく彼女たちはとなりの部屋へ入り、部外者をシャットアウトするようにドアを閉めた。
無論、多感な少年たちはあれこれと妄想をはじめる。
この壁を一枚通り抜ければ、どきどきするような景色が広がっているのだ。
しかも経験豊富な年上のお姉さんたちである。
「達矢、おまえに頼みがある」
股間をもっこりさせながら豊は言った。
「なに?」
達矢も小さなテントを張っている。
「となりの部屋の様子を見てきてくれないか?」
「えー、やだよ、自分で行ってくればいいじゃん」
「俺が行ったら絶対怪しまれるって。ここは達矢の家なんだからさ、達矢じゃなきゃだめなんだよ」
「ちぇっ、しょうがないな」
とか言いつつも達矢はかなり乗り気である。
さっそく数学の問題集を手に、姉の部屋を訪問した。