我ら純情中学二年生-2
興奮に鼻をふくらませつつ二人してページをめくっていると、サッカー部員の豊がヌード写真の一部を指差し、こんな疑問を口にする。
「どうしてここだけ隠すんだろうな」
「それは……やっぱり大事なところだからじゃないのかな」
達矢はなけなしの模範解答を披露した。
ちなみに彼は野球部に所属している。
「大事なのはわかるけどさ、こうやって隠すから余計に見たくなるんだよ」
「そうそう、大人ばっかり見放題だもんな」
「それってずるくない?」
「ずるいし、むしろ羨ましいね」
修正済みの被写体に目を凝らし、いろいろと想像をはたらかせる二人。
一体全体どんな形をしているのか、どこからおしっこが出てどこから赤ちゃんが産まれてくるのか、まるでわからなかった。
と、そこへ、ドアをノックする音が……。
ぎくりとした達矢は慌てて雑誌を隠し、平静を装ってドアに向き直る。
「達矢、入るよ?」
姉の声だった。
「いいよ」
達矢が返事をすると遠慮がちにドアが開き、その向こうから姉の理乃(りの)が顔をのぞかせた。
ちぇっ、めんどくさいなあ──と達矢は舌打ちしたい気分だった。
「何か用?」
「ううん、別に。何してるのかなあと思って」
「見ればわかるだろ、友達と勉強会」
「ふうん、そうなんだ」
理乃は弟の友達のほうにも声をかけた。
「よっ、少年」
「ど、どうも……」
ワンテンポ遅れて豊が返事をする。
セーラー服姿の理乃は今日も変わらずきれいだ、と豊などは思う。
「わからないところがあったら何でも訊いてね、教えてあげるから」
「あ、はい、そうします」
豊は背筋をぴんと伸ばし、理乃に向かって頭を下げた。
けれども達矢としてはおもしろくない。
「用がないならさっさと出てってよ」
「はいはい、わかりました」
やれやれといった感じで理乃はその場を立ち去る。
だが一度だけ振り返り、先ほどの台詞をくり返した。
「何でも訊いてくれていいからね」
いつまでも耳に残る天使のような声だなと豊は思った。
その余韻を断ち切るようにドアが閉まると、達矢は清々した顔で背伸びをした。
これで心置きなくエロ本が読める、と。
しかし、となりの友人の顔がでれでれしているのが気になる。
「おい、豊?」
まったく応答がない。
だめだこりゃ……。
達矢は顔の半分だけで笑い、しょうがないので自分だけで雑誌を見ることにした。
いつか自分もこういう女の人とエッチなことをするのだろうか。
モデルさんの裸を眺めながらそんなことを考えていると、おもむろに豊が話しかけてきた。