心霊スポット-7
ずいぶんと遅かったじゃない、という愚痴が喉まで出かかったが、はげしく絶頂したばかりで声にならない。
そんな彩夏の背中を抱きすくめる腕があった。
少々乱暴なところはあるけれど、その手から繰り出される愛撫に彩夏は酔いしれた。
「あん、そっちは、だめ……」
前触れもなくペニスが膣内に入ってくる。
太くて硬くて長い、人の手首ほどもありそうな挿入感に彩夏はよだれを垂らす。
「はふん、あふん、んっ、はっ、あう……」
控えめなピストンからの高速ピストン、それでいてゆりかごのような思いやりがある。
「あそこが、こわれちゃう、おねがいだから、やめないで……」
彩夏は失禁した。
失禁しながらオーガズムを感じた。
そうやって意識の果てまでトリップしていたのだが、後ろの彼はまるで容赦がない。
まるっきり犯されているような感覚である。
いくいくいくいくいく──そんな字幕が彩夏の脳裏をよぎる。
そしてついには気絶した。
どれくらいそうしていたのか、彩夏が目覚めた時にはそばには誰も居なかった。
辺りは相変わらずの暗闇である。
結局、幽霊らしきものに遭遇することもなく、このまま無事に帰宅できそうだ。
「お腹空いたなあ」
服を着ながら呑気につぶやいた時だった。
遠くから誰かの足音が聞こえてきたかと思うと、息も絶え絶えの様子の透が病室に入ってきた。
おそろしい悪夢でも見たのか、彼は全身汗びっしょりで、出た、出た、と何事かをしきりに訴えてくる。
「ちょっと、どうしちゃったの?」
彩夏がたずねると、
「出たんだよ、トイレに……」
と透は目を剥いて唾を飛ばした。
「トイレは一回だけかと思ったら、エッチしてからまたトイレに行ってたの?」
「はあ?」
「だってトイレから帰ってきて、あたしとエッチして、それからまたトイレに行ったんでしょ?」
「何それ」
「違うの?」
透は返事をしなかった。
まったく身におぼえのない話だった。
「だけど、透くんがあんなにエッチが上手いなんて全然知らなかった」
少し鼻声になった彩夏が明るく言う。
あえぎ過ぎてそんな声になったのだろう、と透は彩夏の身悶える姿を想像した。
それにしても彼女は一体誰と交わっていたというのか。
「そんなことより、俺、幽霊を見ちゃったんだ」
女子トイレで怖い体験をした透は、早く帰りたくて仕方がない。
半信半疑でいる彼女の手を引き、二人で建物の出口を目指す。
もう一秒だってこの場にとどまっていたくなかった。