心霊スポット-4
それは透のよく知る声だった。
「彩夏ちゃん?」
ガールフレンドの名前を口にした瞬間、情けないことに透は涙目になっていた。
「いえーい」
女の幽霊がピースサインをしている……いや、どうやら彩夏に間違いなさそうだ。
顎の下から懐中電灯で顔を照らすという、お約束のいたずらが思惑通りに成功して、彼女は無邪気に笑っていた。
「お化けだぞー、血を吸っちゃうぞー」
ハイテンションでおどける彩夏に向かって、
「それ、お化けじゃなくてドラキュラだから」
と冷静に突っ込む透。
そんなことより、あんなに怖がっていた彼女がどうしてここに居るのか、透は不思議でならなかった。
まさか、霊に呼び寄せられたとでもいうのだろうか。
ははは、と透は酸っぱい顔で笑って済ませた。
その後も幽霊ごっこは続き、ようやく空気が和んできたところで彩夏がとんでもないことを言い出した。
「ねえ、ここでエッチしようよ」
透は耳を疑った。
いくら若い二人だからとはいえ、夜の廃墟で裸になどなれるわけがない。
大事なところを蚊に刺されでもしたら厄介だ。
しかし彩夏のほうはかなり積極的である。
体を密着させ、豊満な胸を押し付けてくるのだった。
まあ、たまにはいいか──まんまと誘惑に負けた透は、彩夏の手を引いてその部屋を出たのだが、果たして二人きりで落ち着ける場所などあるのだろうか。
「ここならいいんじゃない?」
うっとりした表情で彩夏は病室を指差した。
暗闇に目が慣れてきたせいか、お互いの気持ちが少しだけ読み取れるようになった。
どちらの顔にも性欲がみなぎっている。
幸い、病室にはまだ使えそうなベッドがあった。
もちろん、セックスに使えそうなという意味なのだが、彩夏はベッドには見向きもしないで透の首に両腕をまわし、キスをした。
唇と唇が重なり合い、二人の距離がぐっと縮まる。
夜はまだ始まったばかりだ。
「あん、すごい、透くんが……」
中に入ってくる──という部分を彩夏は言わず、色っぽい声であえいでみせた。
透は挿入の真っ最中だった。
前戯のシックスナインが長時間に及んだので、体中のあらゆる部分が敏感にわななき、透が腰を振るたびに彩夏は身震いした。
脳までとろけてどうにかなりそうだ。
「今日の彩夏ちゃん、いつもと違うね」
そんな透のささやきも彩夏の耳には届かない。
何かに取り憑かれたように快感を欲し、絡み合って、透が小休止をしようものなら膣を器用にすぼめ、とことんペニスに執着するのだった。
「いく、いく、いく……」
絶頂がすぐそこまで来ている。
「いっ、ちゃう……、あっ、ふ……、うん、いく……、は、はうっ……」