蜜月は予鈴と共に-4
狡猾(こうかつ)な登坂は舐めるような目つきになった。
「そうか、君がどうしてもと言うのなら私は構わないよ」
ようやく釣れ魚をどんなふうに料理してやろうか、などとあらぬ方向へ神経を注ぎ、登坂は葉子の肩を抱いた。
服の上からでもわかる女の肌の柔らかさは格別である。
そのまま葉子の顔をのぞき込み、薄紅色の唇を奪いにいくが、これは拒否された。
「まあいいだろう」
登坂は上機嫌だった。
彼の手から逃れた葉子は半泣きの表情で立ち尽くしている。
「ヌードになりなさい」
ソファーから登坂が言った。
葉子の目がちらちらと泳いでいる。
「聞こえなかったのか、服を脱いで裸になれと言ったんだ」
泣く泣く従うしかないのかなと思った葉子は、最初の一枚を丁寧に脱いでいく。
お気に入りのベージュのジャケットである。
「胸のサイズはいくつだね?」
ブラウスのふくらみ具合を見ながら登坂が訊くと、葉子は正直に明かした。
「Cです……」
どうしてこんな恥ずかしいことを告白しなければならないのか、葉子は泣きたくなった。
「次だ、次」
ストリップの続きを催促する登坂は、この女は調教しだいでどうにでも化ける素質を持っている、間違いない──と本気で思っていた。
そんな彼の前で葉子が着衣を脱いでいく。
もつれる指でもってブラウスのボタンを外し、それを脱いだ。
ブラウスの下は肌着で、その下は下着である。
「どうした、早くしないか」
登坂はひょこっと顎を上げた。
胸にも下着にも自信のない葉子だったが、
「あんまり、じろじろ見ないでください……」
と、文句を添えつつ肌着を脱いだ。
ブラジャーが露わになり、卑劣な教頭が目で犯してくる。
我が物にしようと今にも襲いかかってきそうな勢いだったので、葉子は言った。
「もう許してください」
「だめだ」
「これ以上は無理です」
「私に逆らったらどうなるか、わからない君じゃないだろう」
それを言われると何も反論できなくなる葉子だった。
こんなところで教師生命を絶たれるわけにはいかない。
自分のことも可愛いけれど、教え子たちはもっと可愛いのだ。
葉子はブラジャーのホックを外すと、恨めしい気持ちで乳房をさらした。
その瞬間を待っていた登坂がすかさずスマートフォンをかざし、悪びれるでもなく画像におさめていく。
葉子は下を向いてじっと堪えていた。
撮りたければ好きなだけ撮ればいい。
ただわからないのは、そんな画像を四六時中持ち歩いて一体どうするつもりなのか、ということだった。