蜜月は予鈴と共に-3
葉子は一瞬目を逸らしたが、圧力に屈したくないという思いから正面に向き直り、前屈みの姿勢で画面をのぞき込んだ。
そこには、およそ教育現場にはふさわしくない映像が流れていた。
着衣の乱れた若い女性が複数の男性に凌辱されているのである。
顔やきわどい部分はモザイクで修正されてはいるが、どのような行為が交わされているのかぐらいは葉子にもわかった。
ディープキス、フェラチオ、クンニリングス、SMプレー、そしてセックス。
うごめく女体に精液が放たれ、アクメに達したヴァギナが白い泡を吹きこぼし、ふたたびペニスで貫かれている。
ぐちゅぐちゅぐちゅ、という卑猥な音が再開されると、葉子と登坂のあいだに微妙な空気が漂いはじめる。
男と女という本能的な部分を意識せずにはいられなくなる。
「この動画をどこで手に入れたのですか?」
やや赤面しながら葉子は訊いた。
「そんなことはどうでもいいのだよ。重要なのは、その卑猥な動画の中身がどうなのかということだ」
さっさとギブアップしろ──と登坂は腹の中でつぶやいた。
「私じゃありません、信じてください」
「そうか、山岸先生ではなかったか」
「疑いが晴れたのなら、これで失礼したいんですけど」
「まあ待ちなさい」
登坂はのんびりと立ち上がり、葉子のとなりに座った。
ほのかに漂ってくる女物の香水の匂いが登坂にはたまらない。
対する葉子はお尻ひとつ分だけ距離を置いた。
「いや、すまない」
唐突に教頭が謝るものだから、葉子は意外な顔をした。
ロリコン教師として有名な登坂光雄だけに、相手が成人女性では気分が乗らないのだろう、と葉子が警戒を解いた時だった。
「私としたことが、うっかりしていたよ」
「えっ?」
「そういえばモザイクを消すのを忘れていた」
そう言うと登坂はタブレット端末を操ってモザイクを取り除いてしまう。
小さな悲鳴をあげたのは葉子である。
かつての自分がそこに映っていたのだから無理もない。
「これでもまだとぼける気かね?」
「あ、あの、これは、違うんです……」
慌ててタブレット端末を奪い取ろうとする葉子の手を、登坂が掴む。
「しかるべきところに報告させてもらうよ」
「待ってください」
「だめだ」
「教師を続けたいんです」
ふん、と鼻で笑う登坂。
「君のような破廉恥な人間に、聖職者を名乗る資格などない」
そうまで言われてもなお葉子は食い下がり、やがてこう言った。
お詫びに何でもします、と。