夜這いする、の巻-4
次の瞬間、彼女はスレンダーな両脚を交差させて大げさに縮こまってみせた。
この展開はひょっとすると、ひょっとするかもしれない。
窓の向こうは完全なる密室であり、おそらくは門限も過ぎたであろう男子禁制の時間帯である。
顎を上げた彼女の表情がだんだん悶絶の色に染まっていくのを見て、ぼくは思わず窓ガラスにかじり付いた。
そうしてあっという間に下着姿になった彼女ときたら、体の正面をこちらに向けて開脚し、おずおずとショーツの中に右手を忍ばせるのだった。
明らかにピンクローターのものと思われる細長いコードが、ショーツの内部と繋がっているのがここからでもよく見える。
そんなふうにおもちゃと指で陰部をもてあそぶ彼女の痴態に、ぼくの分身にもとうとう異変があらわれはじめる。
体中の血液という血液がそこに集まり、心拍数の乱れたぼくから冷静さを奪ってしまう。
ぼくはあらためて彼女を観察した。
普段のおとなしそうな彼女とは違い、ブラジャーをたわませては乳首を摘み、ショーツの中の手は股間をまさぐっている。
きっと女性ならではのエロティックな願望を、その指先に託しているに違いない。
およそ五分間くらいはそうしていただろうか、彼女の熱気が水蒸気となって窓を曇らせる中、めまぐるしく自分の中をかき混ぜる指に最後の火を灯し、可愛いその人は絶頂へのぼり詰めた。
びくんびくん、と痙攣する女の子がこんなにも愛おしいとは、ぼくは思わず彼女をまもってあげたくなった。
べとつく指をだらしなく放置したまま、満ち足りた表情で余韻に浸る彼女だけれど、たったこれっぽっちで終わるとはとても思えないわけで、そこはやはり本物が欲しいのではとぼくなどは想像した。
だったらぼくが君の欲求を満たしてあげる。
衝動的にそんな感情が込み上げてきて、体を起こそうと何かに手を掛けた時だった。
差し出したその手に痺れるような痛みがはしり、ぼくは不覚にも小さな悲鳴をあげてしまった。
サボテンの存在をすっかり失念していたのである。
「誰か居るの?」
それは彼女の泣きそうな声だった。
まずい、見つかった。
小心者のぼくはすくみ上がった。
と同時に、いや待てよと冷静に打開策を見出そうとする自分も居た。