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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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真樹子からの手紙-1

 豊川は、1通の封筒を前に難しい顔をしていた。
 この手紙は、デリヘル嬢真樹子から店を通じて渡されたもの。
 事の始まりは、豊川がいつものようにデリヘル「美熟館」にデリバリーの連絡をした所から始まる。

「真樹子さんをお願いします」
 これまで通り、普段と変わらなかったのはここまでだった。
「申し訳ありません。真樹子さんは退店いたしました」
「えっ・・・・・・」
 文字通り、絶句した。
 自分の性的欲求を達成できないことよりも、もう二度と真樹子に会えないという事実に愕然とした。
 自真樹子に恋愛感情を持っていることを自覚していたし、少なくとも客とデリヘル嬢という関係以上の相互感情があるものと思っていただけに、ダメージは大きかった。
 今日、その恋愛感情をぶつけようと思っていたし、これからは今までの関係性とは違った間柄になれることも期待していた。
 それが、まさかの退店通告。
 デリヘル嬢の連絡先を聞くことは、表向き『NG』としている店が多い。恋愛関係になること以上に、直接交渉されて店の取り分が無くなることを危惧しているからだと聞いたことがある。
 豊川も自分から嬢の連絡先を聞いたことは無かった。中には向こうから教えてくれる嬢もいたが、豊川から連絡したことは無い。
 所詮、お金を介した遊びだし、嬢からすればビジネス。下手な感情を持っても何の得にもならない。そう思って、遊びと割り切ったデリヘル利用だった。
 しかし、真樹子には特別な感情を抱いてしまった。だからこそ、今日は連絡先を聞こうと思っていたのだ。
 残念ながらその想いは叶わない。
(この前会った時に何で聞かなかったのか?人生においてタイミングは非常に大切だと、望未や奈津美の件であれほど思い知らされていたのに、何故言えるタイミングで言わなかったのか?)
 自問自答してももう遅い。既に真樹子とのラインは途切れてしまったのだ。
 色々と考えてみても後悔しか浮かんでこない。残された道はこの封筒を開け、真樹子の記したメッセージを読み解くしかない。
 ハサミで綺麗に封を開け、便箋を取り出す。


 豊川さん。
 このようにお手紙でのご挨拶となってしまいごめんなさい。
 私は11月でお店を辞め、九州に引っ越しました。
 元々、年が明けた1月から仕事に就くことが決まっていましたが、急遽12月から働けないかと連絡がありました。
 色々とお世話になった方からのご紹介でもありましたので、お受けさせていただきました。
 直接会ってお話ししたかったのですが、連絡先もわからず、色々と迷い、心苦しかったのですが、このような形でお伝えすることになってしまいました。
 在籍時には多くのお客様にお世話になりました。
 中でも豊川さんには人一倍かわいがっていただいたと思っています。ありがとうございました。
 本来ならばお金をいただいている私の方が色々とサービスをしなければならないのに、いつも優しくお気遣いいただいて、豊川さんからご指名が入ったことを聞くと、喜んでいる自分がいました。
 いつしか私は、豊川さんに好意を抱いてしまいました。お客様としてではなく、一人の男性としてです。
 私のような風俗嬢が口にできるような事ではないと、十分承知しています。
 このようなことを申し上げることは大変迷惑だとは思い悩みに悩みましたが、自分の気持ちをどうしてもお伝えしたくて筆を取りました。
 ほんの数回お会いしただけで、バカげたこととお思いかもしれませんが、初めての時から豊川さんの優しさに、私は癒しをいただきました。
 このような仕事をしていると、無理強いや過度の要求をしてくるお客様もいらっしゃいます。もちろん紳士的なお客様もたくさんいらっしゃいますが、お金のためとはいえ、自らの身体を預ける自分に、自己嫌悪する日も少なくありませんでした。
 仕事なのだと割り切り、こんな職業でもプロ意識を持つことで、自分の中でこの仕事の正当性を担保していたのだと思います。
 豊川さんと短い時間でも、例えそれがお金が取り持つだけの縁であっても、好意を寄せる男性と肌を寄せあえることに嬉しさを感じていました。
 九州に行く前に豊川さんからお声が掛かれば、離れることは分っていても、いえ、離れてしまうからこそ私の気持ちを伝えようと思っていました。
 この手紙をお読みになっていらっしゃると言うことは、その希望は叶わなかったということでしょう。
 私のような他の男性に弄び尽くされた女では、相手にされないことは重々承知ですし、相手にされないからこそ、直接引導を渡されないように、自分の傷が深くならないように手紙にしたのかと思われても仕方がありません。
このようなズルい方法となってしまい本当に嫌な女だと思います。
でも、どうしても自分の本当の気持ちをお伝えしたかったのです。
失礼の段、申し訳ありません。これからの豊川さんのご健勝をお祈りし、御礼と気持ちをお伝えいたします。
お身体にお気をつけてください。
さようなら。


「ふぅ〜」
 手紙を読み終えた豊川は、深い溜息をついた。後悔の溜息か、それとも安堵のため息か。
 確かに後悔の念が強く先に立ったのは間違いないが、どこか安堵の気持ちもあった。
 40も超え、今更恋愛なんて面倒くさい上に、これまでの経験から積極的に女性を口説いていこうなんて気は皆無だと思っていた。が、それは思い込んでいただけで、実際には心の片隅に女性の温かさを求める気持ちがあったのだと思った。
 またもタイミングを逸した形になってしまったけれど、少なからず真樹子から好意を寄せられていたことは間違いないようなので、まだまだ捨てたもんじゃあないとも思った。
 今更、真樹子を追いかけるようなことはするつもりはない。未練や後悔は残るけれど、真樹子も新しい道を歩き始めている。
 豊川も新しい出会いを求めて歩いていこうと思った。


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