13.おっぱい一発芸-1
『おっぱい鞭』や『おっぱいバット』といった特別メニューが追加される中、ある日『セルフおっぱい搾り』を中心に、乳搾りからメニューが変更になった。 特訓乳搾りに代えて、自分のおっぱいで『芸』を見せる練習が組み込まれたのだ。 みさき曰く、『いくら搾ってもお乳がでないなんて、みっともなさ過ぎます。 どうせみっともないのなら、朋美さんも、自分で嗤っている方が気がでしょう?』とのこと。 朋美は消え入りそうに小さい声で、『……はい、その通りです』と首肯した。
ちなみに朋美がお乳を搾りだせなかった場合、当然朋美は『おっぱい星人』には選ばれない。 かといって契約書に記帳した以上、おっぱいトレーニングを修了するまで、どんな形であれ社会に出ることは認められない。 では『おっぱい星人』がムリな場合は詰みかというとそうではなく、噴乳できない時点でかなり限定されるが、例えば『おっぱい芸人』という候補がある。 『お笑いおっぱい』を鍛えて、みんなに自分のおっぱいを笑って貰えるよう、日々『おっぱい芸』を磨くのが『おっぱい芸人』だ。 では『おっぱい芸』がどういうものかというと、例えば『おっぱい野球』であり、『おっぱいダンス』であり、『おっぱい太鼓』のようなものが挙がるだろう。
『おっぱい芸』。 朋美がみさきから初めて『おっぱい芸』として説明を受けたのは『おっぱい野球』だった。 内容を聞いた時は耳を疑い、呆れたことを覚えている。 けれど今では、真面目な顔で『おっぱい野球』に取り組むのだから、慣れというものは恐ろしい。
『おっぱい野球』。 少女野球と基本的なルールは重複するものの、ピッチング、キャッチング、バッティングを全て『おっぱい』でやるところが特徴だ。
まず『ピッチング』。 ピッチャーは両腕を背中に回し、グルグルに縛られ拘束されている。 いわば『貫頭衣』に腕を包んだ格好だ。 肩と脇が辛うじて体の前に出せるが、脇でもっておっぱいを寄せ、ボールを谷間に挟む。 おっぱいごと谷間を揺らし、下から上へ山なりのボールを放り投げる。 ピッチャーからキャッチャーまでの距離は、3メートル。 乳根からやや離れた乳肉でボールを挟み、乳よもげよとばかりに反動をつけ、寄せてあげたおっぱいを解放する。 上手くタイミングが合えば乳首が胸から垂直に伸び、ボールはキャッチャーミットにギリギリ届く寸法だ。
続いて『キャッチング』。 キャッチャーミットもグローブもない。 あるのはたわわに実ったおっぱいだけ。 肩と脇でもっておっぱいを寄せあげ、ボールが谷間に収まるよう胸を、いや、おっぱいを張る。 寄せてあげ過ぎればボールが嵌らないし、寄せが足りなくてもボールを弾くという、絶妙な力加減が要求される。
最後は『バッティング』。 バットの代わりに、打撃するのもまたおっぱいだ。 自分の脇と肩で限界まで搾っておき、腰のスイングでもっておっぱいを左右に延々と揺すり続ける。 これがおっぱい打法の基本の構えで、あとはタイミングを併せて大きく腰を捻り、思いきりおっぱいをボールにぶつければ、お乳の芯で捉えた時は面白いように打球が伸びる。 おっぱいにボール型の消えない痣ができる代償に、ホームランだって夢ではない。
その他、乳首を地面に擦って絶頂しながら滑り込む『おっぱいスライディング』や、左右のおっぱいを交互に上下させ、おっぱいでもって走る様子を再現する『おっぱいランニング』、監督役がおっぱいを揺すって、尻字の代わりに乳字を宙に描いて指示する『おっぱいサイン』等々、『おっぱい野球』には『おっぱい芸』が随所随所に仕込まれている。 朋美は1人で何役もこなしながら、みさきが指示するシチュエーション――9回裏、2アウト満塁でのサヨナラ2ベースヒットなど――を、唯々諾々と再現した。 おっぱいでボールを抛り、すかさず反対側に走り、乳房よもげよとばかりにおっぱいを振り回してボールを打ち、おっぱいを交互に揺すってその場で駆け足をし、ガッツポーズの代わりに『おっぱいジャンプ』で乳房をクルクル回転させる。 朋美は全ての『おっぱい芸』を、『満面の笑顔』でこなさなくてはならず、バカみたいな笑顔でおっぱいを揺すった。 そんな朋美のあまりのバカさ、みっともなさに、時としてみさきは爆笑するわけだが――朋美は笑われることが役割だから、より一層の笑顔をつくる。 ただ、時折目尻に滲む涙や引き攣る頬は、おっぱい訓練を通じて達観しつつある朋美をもってしても、如何ともしがたい所作といえよう。
『おっぱいダンス』。 手は後頭部、或は腰にあて、足はがに股、或は前後最大開脚に開く。 広背筋に集中し、肩を反らして胸を張り、自慢のおっぱいを強調すれば準備は完了だ。 揺らす、回す、弾ませる、震わせるの4動作を組み合わせ、おっぱいで万物を表現するのが『おっぱいダンス』である。 乳首に数キロの錘を結び、股座を通しておっぱいごと前後に振れば、遠くを夢見るおっぱいダンス。 上半身を焚火にかざし、赤々と炎でおっぱいを照らしながら脂汗を浮かべれば、食欲を充たすおっぱいダンス。 メトロノームのように一定のリズムでおっぱいを左右に揺すれば、永遠の時を刻むおっぱいダンス。 種々様々なテーマごとにおっぱいダンスが決まっており、全て修得するにはそれなりの体力とおっぱいが必要だ。 基本的に一度のダンスは2時間が1単位なので、同じ動作を2時間繰り返すことになる。 ただ上下に揺するだけでも、ペースを崩さず2時間となると中々に酷なので、一流の『おっぱいダンサー』はオブジェとして希少価値を認められている。