honey-1
あの日、二人の始まりはとても奇妙だった。
これは数年後に初めて言える言葉なのかもしれない。それでもきっと運命なのだと言い切るのだろう。
「私があなたを好きになるのに何が必要?」
「簡単さ。僕が笑えば、きみも笑えばいい。」
今日みたいに晴れた日は布団を干すのがいい。洗濯物もよく乾くだろう。空気の入れ替えなんかもしちゃって、掃除だってはかどりすぎる。
青い空に白い雲、爽やかな風に暖かい陽射し。すべてが洗われるような一日。
こんな日は、木漏れ陽の下でゆっくり過ごすのも悪くない。
あなたがいて、私がいて、居る事だけで満たされる存在。そんな生活。
木漏れ陽の下で私はあなたに膝枕をしてあげる。二人に会話はいらなくて、あなたが眠る寝息を聞きながら私は読書をする。幸せ。
長い髪が好きなあなたの為に、伸ばし続けた長い髪は少し飽きてきた。美容院に行ってバッサリ切るつもりが、
「長さは変えないで。」
あなたが笑うなら私は幸せ。あなたは幸せ?
この木漏れ陽の下で私たちは満たされる。言葉も想いも何もいらない。
存在だけがあるだけ。
私が恋を知ったのはいつだっただろう。それが愛に変わったのはいつだっただろう。
大学生になっても彼氏と長く付き合えない私は恋愛を諦めていた。まだ本当に好きな人に出会えていないと友人は言ってくれるけど、それはいつの話になるのか。
もうすっかり恋愛から遠ざかった私は少し周りに対して冷めていた。
そんな時に私に声をかけてくれたのが、あなた。
「相変わらず男っ気がないな。彼氏いないの?」
「大きなお世話よ。」
「そう怒るなって。誰か紹介してやろうか?」
「どうせ無駄だからいらない。」
「なんで?」
「どうしても長続きしないから。恋愛にむいてないのかも。」
「もったいないな。」
せっかくの話だと分かっていても気がのらない。それ以上に興味が無い。今更知らない人とゼロから恋愛をしようだなんて面倒臭い。